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藤井フミヤ コンサートツアー2020-2021”ACTION”によせて

 

  先日終了した藤井フミヤさんのACTIONについて遅ればせながら綴っておきたいと思います。いつものことながら残念な記憶力のためにライブレポートと呼べるようなものとは程遠いのであしからず。

 

 2021年のライブ

 2020年以降、文字通り全ての人がいろんな思いをして、何が本当に大切で、何が本当に必要なものなのか考えなければいけなかった時間を過ごしてきたと思う。変わってしまったものも、変わらなければならなかったものもたくさんあった。少しずつ社会の考え方やとらえ方も変化したように思うけど、やっぱり音楽や芸術は、前と変わらず…というか以前よりも増して必要で大切なものだと改めて実感された方も少なくなかったはずです。

ただ、音楽への愛とか恋しさは深まったけれど、それを伝える方法や、それを肯定する方法は正直私にはわからなかった。なんとももどかしい日々でしたが、その中ですごく早い段階(2020年の秋のはじめだったような…)でツアーの開催が発表されたこと、正直すごく驚きました。そして最大限配慮された日程だったのもすごくかっこいいと思った。ライブに行くことを少しためらう気持ちもあって、(ほら仕事の立場とかあるし…笑)どうしようかな、行っていいのかなって悩んだこともあったのだけど、観客でこれだけ悩むんだったら開催される方々の苦悩はどれほどの事か…考えるだけでいろいろこみあげてきます。

改めて、すごく難しい状況の中で試行錯誤しながらもライブツアーを開催してくださったこと、そしてそれが音楽を・とりわけ歌を中心としたACTIONであったことはいろんな人にとって大きな意味があったと思う。とにかく楽しくて忘れられない時間になりました。改めてすべての皆様に心からの感謝と拍手を送りたいです。まだまだみんな大変だけど、楽しい時間を過ごして前向きになれた、そして音楽っていいよね、また一緒に遊びたいよね、って思えたのが最高に幸せでした。今回のライブほんとに見れてよかった!って過去最高に思ったよ。

 

 最高のボーカリスト:シンガーとして

藤井フミヤさん、本当にいい声で、非常に上手いです。もう毎回ステージを見るたびに書くのでそれしか書くことないん?って自分でも思う。でも揺らぎないことなので。フミヤさんのファンになっていつかこの状況に慣れてしまうのではないか?と思ったこともあったのですが本当にただの杞憂でした。何度見ても、何度聞いても、その声の成熟度合と、純真さと、色気に感動します。藤井フミヤ、脂乗り切ってる。間違いなく59歳を迎えられた(お誕生日おめでとうございます!)今が一番おいしいです。

 そして、2020年から複数のメディア、特に音楽番組に出演なさっていたこともすごく楽しかったな。藤井フミヤさん、たぶん世間が思うよりずっとチャーミングで、ストイックだけど全然近所にいてほしい人(なんだそれ)なのでそういうパーソナルな部分をクローズアップされることもオタクとしては最高なのですが、やっぱり彼は音楽の中にいるとき―音を奏で歌を歌い、言葉を紡ぐときこそが最も美しい方なのでその面がいろいろなところで発信されていくのはとてもうれしく、興味深かったです。

一番話題になったのはNHKの特番かな?このご時世に、大型タイアップがあったわけでもなく完全特番として一人のアーティストに焦点を当てた番組が放送されたのってすごいこと!フミヤさんのお言葉がたくさん聞けたのはもちろん、売野さん・芹沢さんの貴重なお話も聞けてすごく興味深い番組でした。この番組の感想は無駄に長くなるから割愛するけど、あ、この方って本当にすごい人なんだ、ずっと音楽と歌声を求められて生きてきたアーティストなんだって改めて実感しました。いや、知っていたつもりだったけど、本当にいつも想像以上の人だというか。音楽とその声で世代問わず多くの人を魅了してきたことを、改めて見せていただいたように思います。

そんなこんなでTV等でもちょいちょい見ていたのですが、やっぱりライブは本当に凄まじかった。極上のエンターテイメントであり、最高のACTIONだったと思う。フミヤさんはライブアーティスの中の王道ライブアーティストなので、CDきいてすごくいいな!と思った曲がライブで聞くと、えっ…やば…ありがとう(感嘆の声)になるということは割とあるのだけど、今回はその、えっっの部分の振れ幅が非常に大きかった。これはファンの願望も入っているのでしょうけど、フミヤさんご自身も、バンドの皆さんも(もちろんわれらが愛する尚ちゃんも!)並々ならぬ想いでステージを作っていらっしゃったのかな、と感じます。

 
歌を聞いたライブ:ACTION

 生のステージを見たときの感想に藤井フミヤの歌を一番聞いたツアーだった、と書いたのですが、もっと細かく言うとボーカリスト:シンガーとしての藤井フミヤのすごさを存分に味わいつくしたライブだったと思います。

なんかろっきんぐおんとか読んでいたタイプだったのでアーティストって言葉を使いがちだし笑、フミヤさんは美術的な側面も含めて正真正銘の“アーティスト”だと思うけれど、藤井フミヤって最高のボーカリストなんだ、この人は歌をうたう人なんだ!ということを思い知らされました。

 

今回はチェッカーズの初期の曲も含めて、ボーカリスト藤井フミヤが何をどう歌ってきたのか、それにどんな愛情をのせてきたのか、が最もわかるセットリストだったんじゃないかな。

セトリに関しては初めてみたとき、これネットミームでいうところの“ぼくがかんがえたさいきょうのふじいふみや”なんじゃないの?と思ったぐらい。デビューから最新のアルバムに至るまで網羅されたセットリストを2021年のサウンドで聴けたのはこれ以上ない贅沢だった。セトリの文字面だけでのぞいてもよかったってなるレベルかも。

 

<さぁその手をこの場で出してよ 今すぐ出しなよ/僕が先 さぁハートのエースをあげるよ ゲームは終わりさ>で始まったライブ、最初からクライマックスだし、我々にとって永遠に<Mirrorに映る Love voice>はフミヤさんの声であり<Do the little dance>することは実はすべての人の<Style>なのだ、と思った。<思い出は夏のまま時をとめたね>というフレーズのように、<髪のリボンほどいた>ような小さな瞬間を永遠のものとしてこれほど心いっぱいの情景として歌うひとがいるんだ!って純粋に感動した。

<ここはまぶしい砂漠さ desert town つかめない蜃気楼だね><今はまぶしさだけが浮かぶよ 臆病になるほど叫びに変わっていく>のように青く、はかなく難しい恋愛も、まぶしいほどの<ティーンネイジドリーマー>としての記憶も、<はるかはるか 遠い未来を夢見てた>僕らの生き方も<あの星を見上げている>姿も、そして大人になっても<その瞳にドキドキしたい>のもすべて藤井フミヤがうたってきたんだ、って実感した時なんか震えちゃった。人生じゃん。挙げていくとキリもないけど最初から最後まで本当に素晴らしさしかなかったです。

 

初期の曲も含め多くの曲がセットリストに入れられ、2021年の藤井フミヤによって歌われたことは凄く歴史的な事だったと思う。チェッカーズに関しては溢れんばかりの想いがあるので(ファンの人はたぶんきっとみんなそう)、やっぱりうれしかったです。

私はチェッカーズをリアルタイムに見てない世代なので、大音量+生演奏で聞くのは初めて!という曲もたくさんあってすごく新鮮でした。もうほんと今更でしかないけれどみんないい曲。全部好きな曲、そして自分にとってもすごく大事な思い出の曲だと思った。なんというか、私はチェッカーズをきちんと体験していないから、チェッカーズの曲を思い出やノスタルジーという一面だけで語られるときに一抹の寂しさ・疎外感を(勝手に)味わってしまうことがあるのですが、それが全くなかった。あぁこの曲たちは今いるすべての人のためにうたわれているんだ、と自然と思えたことがすごくすごくうれしかった。いやまぁ私が気にしすぎでは、って言われたらそれまでなのだけど笑、ライブに行って生で音楽を聴くことの醍醐味をまた味わえたような気がします。 

何より、フミヤさんがあの頃のフミヤくんをオーバーラップさせながらも、すごく今らしく、今の声と音で歌ってくれたのが最高でした。オタクだからチェッカーズの話になると当時の状況は~とか中期における~とかいろいろ思考してしまうのですが、ほとんどはじめて流れから切り離してすごく純粋に音楽だけを聴いたかもしれない(遅)。歌謡曲にカテゴライズされがちな楽曲たちも生で聞くと全然違った印象で!興味深かったです。

 

今回バンドの皆様が素晴らしかったです!!いろんな音楽の形はありますがやっぱり生のバンドサウンドってすごく楽しい!ということを痛感しました。ほんとみんな一生おいしいモノ食べてほしい。(もう食べてる…?笑)素晴らしい演奏をありがとうございました!すべてをほめたたえたいです。

あと尚ちゃんこそが神の使者です。以上です。とだけ書いて終わってもいいぐらい。あの、本当に素晴らしかったです。。歌うサックスとはこのこと!天才でしょ。改めて生で聞いたときその大いなる存在感に感動しました。一音なるだけで音楽の詞世界の解像度がぐっと上がっていきますね。尚之さま一生好きです。

 

 特に印象的だった曲について残しておきます。順不同。

 

涙のリクエスト

永遠のスタンダードナンバー。いろんな人がカバーしていたりして愛されてる曲なので、いろんな世界があると思うけど、今回聞けてわ!本物だ!って思った笑。私は初めて生で聞いたのですけど、ピアノの裏メロいいよね、ってのと結構情熱的な歌なんだって思いました。歌詞の内容はわりと切ないけど、その切なさが歌われることで甘酸っぱさに変換されていくのが素敵。大人のグラマラスさの中に失われない若々しさがある今のフミヤさんだからこそライブで絵になる曲でした。この曲に限らずだけど、多くの人にとって思い出の曲たちが演奏されたときの会場の特別な熱気を味わえたことはずっと心に残っていくと思う。

 

〇WE  ARE ミーハー

一番すごいのはこれが藤井フミヤさんとしては最新のアルバムに収録されていること。ライブによっては80年代に発表された曲のあとに演奏されたこともあったけど、同じテンションで会場を熱気の渦に巻き込んでいくのは凄かったです。これぞ藤井フミヤだと思います。単純にいい曲、というかすごい歌詞だと思う。ミーハーって必ずしもいい意味で使う言葉ではないけれど、ここまで楽しく描き切ったの、かっこいい!

 

〇この空の真下で

この曲がこのライブを象徴しているように(勝手に)思います。全体通して一番響いた曲かも。

<あの子の歌が聞こえてくるんだ 悲しみの真下で/あの子は誰に歌っているんだ ひとりぼっちで /あの子の歌が消えていくんだ この空の真下で/あの子は誰に歌っていたんだ 一人ぼっちで>てフレーズいいよね。音楽を聴くのにはいろんなきっかけがあるけど、一番単純で心に響くときって、自分で選んで聞くときではなくて、自然と歌が聞こえてくるときだなと思います。今回のライブはまさにそんなライブだった。悲しみの真下でさえも聞こえたあの子の歌に対するアンサーこそがACTIONだったのかもね。

 

 

 あと、今回のライブは以前のインタビューでフミヤさんが語られていたようにすべての人の”心を盛り上げる”、楽しいライブだったのですが、いくつかトクベツな曲もあったように思う。どうしても忘れられないので、この曲だけは記しておきたいと思います。

100Vのペンギンの衝撃:WAR IS OVER?

 今回のライブで一番の衝撃。生で聞いたときあまりの衝撃に崩れ落ちてしまうかと思いました。この曲がセトリに入っていると知ったのは昨年12月の配信ライブの時だったかな、これは何としてでも見に行かなければ死ぬまで後悔してしまうだろうと感じたのを鮮明に覚えています。この曲のために、チケットを買ったようなものでした。

私は藤井フミヤが怖いの、実は。どんな曲を聞いても、何度ライブに足を運んでも、「でもこの人100Vのペンギン書いてうたっている人なんだよ!?」がよぎる度に藤井フミヤというアーティストの深度と多面性に息をのんでしまう。人間的で誠実な愛と、グラマラスな夢を混ぜ合わせた世界を描きそれを音にする人なのに、<邪魔なアルミ玉チャリティボックスに捨て>る人にもなれるひと。<街は黒く濁った雨に打たれ>ている世界でただ<君の方がつらいね 君が僕をつくった>とうたうひと。<100Vのペンギンたちは不思議な電気仕掛けの夢を見る>のか?<僕を作った>君はなぜつらいのか? そして<僕>は誰なのか?―考えてもキリがないこの歌詞とサウンドにずっと心を奪われたまま、もうずいぶんと時間がたってしまった。私はこの曲を書いたチェッカーズと、藤井フミヤにずっと囚われていくのだと思う。そしてなぜ藤井フミヤに魅せられるのか?という問いの答えの一部はこの曲の中にあるのではないか、とも思います。チェッカーズという文脈でも、藤井フミヤの文脈でも大いに語られてほしい曲。

今回のライブでのパフォーマンス、あまりに素晴らしく、ただただ立ち竦んでしまいました。正直MC等々全く耳に入らなかったくらい。(ごめんね!)前曲のこの空の真下でーRolling My Stone(これもすごい曲)から100vのペンギンの演奏まで、ボーカリストであり、パフォーマーであり、アーティストである藤井フミヤの真骨頂を見たように思います。

フミヤさんってどんなライブでもエンターテイメント性を決して失わない方で、それこそが彼の実力なのだとも思うけど、今回の100Vのペンギンを見て、藤井フミヤがいい意味で最も遠い人に感じられた。我々が立ち入ることのできない、非常に特別な境地に達してしまった瞬間を目撃したような気持ちです。もう二度とこの感動は味わえないかもしれない。あまりにも圧倒的でした。

曲の終盤でWAR IS OVERと繰り返されるあの瞬間、何を考えていたんだろう。繰り返される強い言葉が、心に響いて離れません。何度も警鐘のように繰り返される言葉が、決してWAR(とされるもの)が終わっていないことを暗示しているような気も。聴いた人だけの解釈があるので何が正解なのかわかりませんが、このパフォーマンスこそが最も歴史的なことだと思った。藤井フミヤの秘める情熱と、詞の中に見え隠れする冷酷さとを芸術として昇華した歴史的なパフォーマンスを目撃できたことは一生忘れないよ。

 

 

ということで、本当に素晴らしいステージでした。毎回書いてるからほんとかよって思うかもだけど、これだけは書いておくね。今の藤井フミヤが一番最強です。

 

 アリーナ公演あるって!!!!

www.fumiyafujii.net

これ本当に本当にうれしかった。もしこのページを見てくださっている天使のようなお方で、まだ観ていないよ、という方がいらっしゃったら、もし状況がゆるすのであれば目撃者になられることを強くお勧めいたします。

 

私も(チケットと休みが取れれば)最大限の対策をしたうえで行くつもり。無事に開催されますように。

また一緒に遊ぼうね!