私向けリクエストアワー

思い出とか感想とか twitter:@genjipie0923

藤井フミヤさんの十音楽団を見た感想

2019年も9月21日を過ぎて、新しい季節が始まろうとしている。

つい去年まで9月って特に何もないな…って思っていた自分がこの日を境にまた新しい年が始まるなぁぐらいの気持ちで921を終えたことに驚くのですが、このタイミングで2019年の夏の素敵な思い出を残しておこうと思う。ということで、藤井フミヤさんの十音楽団について個人的な感想を書こうと思います。

当ページはMCやセットリストを正確に記録するものではありませんのでご了承ください。あとちょっとうろ覚えなところもあるかも…

 

f:id:moffumofumofu:20190922045505j:plain

 

35周年と2019年のライブ

今回のツアー十音楽団はフミヤさんのデビュー35周年アニバーサリーイヤーを記念して行われたものでした。昨年(2018年)は35years of loveと題されたツアーでチェッカーズ時代も含めてベスト盤のようなライブを行われていたと記憶していますが、今回はその流れも汲みつつ、新しさを追求したという非常に衝撃的なライブ。ツアー前・ツアー中のメディア出演では〈これまでにない〉といった言葉で語られておられましたが、本当にそうでした!だれも見たことが無い、そして藤井フミヤにしか実現できないステージでした。

 

ライブ本編の話の前にもう一度記しておくけど35周年ってすごいですね、というかすごいんだなぁと何度も実感した一年でした。長く愛される音楽はたくさんありますが、ライブ活動があって新譜があって、というサイクルを続けることは本当に大変なのだろうと思います。私も音源や映像だけでもいいのだけどできる事ならライブ観たかったなーって思うアーティストがたくさんいたりして…時々すごく切なくなる。そんな中わー現役だな程度でなくちょっと働きすぎなのでは…(ほめ言葉)と思える藤井フミヤ様には凄く救われたというか、リアルタイムで全盛期を経験している感が最高にしあわせでした!

 今回のツアー期間中にニューアルバム『フジイロック』がリリースされたこと、そしてアーティスト藤井フミヤとしての個展The Diversityが開催されたこと、とても面白かったです。

ニューアルバム『フジイロック』はダンサブルな曲もバラードな曲も収録されていて、藤井フミヤの永遠なる若さとエネルギーと多様性がよく現れた作品だったかな。彼の声と表現力はジャンルにも時代にも囚われない自由な翼。その稀有な才能を体験するべく自然とライブに行きたくなったわけですが、『フジイロック』のノリで十音楽団を見るとえっフミヤさんこんなに大人だったの…!?って驚いたり、あっ全然変わってないなって思ったりしたのもいい思い出。

私はいわゆるフミヤートを見たのが今回初だったのですが、それもまた面白かったです。フミヤさんのアートは写実的というよりは非常にエモーショナルなもので、感性にそって描かれた自由なものだという印象を受けました。何度も見たことあるファンの方はフミヤさんの芸術家としての新しさを楽しまれたのかな?私は何分初めてだったので藤井フミヤという人はひとのからだの、そしてこころのどの部分を見ているのか、それをどうアウトプットし表現されるのかということが、絵というメディアを通してじっくりと提示されたことがとても興味深かったです。

細かく言うとフミヤさんってたぶん指先まで見ている人なのだろうと思った笑 ああいう繊細な、どこに向いているでもないけど穏やかな手を描けるのは素敵です。きっと仕草であったりと言葉であったりの繊細な部分と、大枠の意志の両方を向き合って捉えられる方なのだろうと思います。だから、誰かを包む繊細な歌もみんなを楽しませる明るい歌も歌えるんだなって なんか感動しました。こういう見方が正しいかはわかりませんが(もっと芸術家としてちゃんと見るべきだったかもしれないなーとはちょっと思いました)。

アルバムや個展でフミヤさんの色々な一面を垣間見させてもらった気がします。それで、自然と生の音楽に還っていったというか、感想の終着点はうわーライブ行きたい!だったのは魔法的だなと思いました。何はともあれフミヤさんのこととても好きになった夏でした!

 

十音楽団の新しさ

前置きが長すぎる気もしますが、十音楽団に話を戻すと今回のライブの1番新しかった、そして衝撃的だったのは、1枚のアルバムに基づかないシアトリカルライブであった点、そしてそれを構成し演じきったのが生身の藤井フミヤさんだった点かなと思います。

あらかじめ物語を含んだコンセプトアルバムを作り、それをシアトリカルライブの形式で披露するというパターンは今までの音楽シーンでも見られたことでした。

しかし今回の十音楽団はアルバムを引っ提げてのツアーではなかった。

そういうアルバム出てないのに、どうやって物語つくるのだろうと思ってたけど、さすがはフミヤさん!

既存の曲を新しい表現で再構築し、かつ新曲も入れこんでくるという曲構成。35周年記念ツアーにふさわしいセットリストでもあり、2019年の藤井フミヤを本当に上手くプレゼンした構成でした!

今回のセットリストに組み込まれた楽曲の発表年は1980年代~2019年と、30年近い幅があったにも関わらず、全ての曲がこの十音楽団のために書かれたのでは…?と思ってしまうほど。

  35年分の曲からひとつの物語を作ることが出来たのは、フミヤさんが手がけた音楽の根本に一貫したテーマがあるからだと思います。

もちろん、アレンジ面でも、フミヤさんの歌唱力面でも大きな違い(進化)はあるわけですが、それらを超えて響くメッセージが一貫していて、本当に格好良かったというかなんだか圧倒されてしまった。

  アレンジの変化と魅せる藤井フミヤの表現力の進化がすごく分かりやすかったし、同時に詞のメッセージの変わらなさが対照的に浮かび上がっていたと感じました。

進化を見せることで、変わらなさをも提示するという境地にいるボーカリスト、とてもレアだと思う。凄い。

そして歌詞カード見ながらもう一度噛み締めたい気分になりました。この2ヶ月でまた課金しちゃったよね笑 みんなCD買ったりしてフミヤさんの歌詞研究しよ…

あと私の中ではシアトリカルライブ=地球外生命体等々の''設定''が付いているアーティストが自らの世界を補完して観客をそこにトリップさせるためのもの、というイメージだったので、(多分間違っている)

私にとってはステージにいるのが生身の藤井フミヤであったことはとても驚いたポイントでした。なんか特別ではあるのだけどフミヤさんのライブだなという謎の安心感がありました。

イメージの補完や全く別次元のファンタジーストーリーでなく、日常の延長を物語に変えられるアーティストって殆どいらっしゃらないと思うのですがどうなんだろう。フミヤさんってちゃんと人間だけどちょっと神聖なエッセンスが多く入っている方だなぁと思ってました…やっぱ歌の妖精さんかな

 

十音楽団のコンセプト ''自分の物語''

 音楽で物語を紡ぐというコンセプトのもと構成されたライブだったわけですが、今回の物語の特徴は、作り込まれているけど観客が入り込む空白が多かった点だったと思います…って書いてもなにも伝わらなさそうだけど笑

   ストーリーの構成・道筋ははっきりしていて、配布されたプログラムの通り、以下の5章立てでした。

第一章 命の物語

第二章 赤い糸の物語

第三章 初恋の物語

第四章 叶わぬ恋の物語

第五章 恋とリズムの物語

 

おそらく多くの人は出会いと恋と愛情の物語をご想像されたと思いますが、具体的な登場人物の名前や時代設定がないのはとても面白かった。

名前やら背景やらの設定は決めていた方が、つくり手としては作りやすいかと思います。しかしそこをあえて''開かれた物語''にして、観る人を入れ込み、それを立派な音楽体験に昇華させて成立させてしまうという技量。脚本・演出家としての藤井フミヤ、素晴らしかったです。

 

公式パンフレットでは冒頭で以下のように綴られていました。

〈心の中に、絵巻物のような''自分の物語''を綴る時間。十音楽団は、そんなコンサートにしたい。〉

おそらくこの言葉が、十音楽団を最もよく表現した言葉でしょう。

 十音楽団も物語を紡ぐけれど、オーディエンス一人一人も''自分の物語''を紡いでいく。そのふたつが重なり合った時の喜びと感動こそがこのライブの醍醐味だったと思います。

こういう風に無理矢理文字にして処理すると難しそうだけれど、全然そうではなかったですね、さらっと物語に引き込まれて入っていく感覚、フミヤさんブラックホールじゃん…って思いました 。沼どころじゃなかったなぁ

 

設定が特になかった分、なんでもありというか、全てが正解だったと思う。間違ったことなんてひとつもなくて、あなたが感じた全てが本当の気持ちだし、それこそが十音楽団の物語なんだと言われている感覚でした。

見る人によっては、藤井フミヤとあなたの(あなただけの)物語だったろうし、あなたと大切な人の物語だったかもしれない。人によって随分と違う、非常にパーソナルな物語だったかと思います。そんな一人一人の感動が藤井フミヤ・十音楽団によって包まれ共有されたこと、本当に素晴らしかった 。特別な音楽体験を全て現実にするパワーがあったステージでした。

日常生活では様々なことを考えて生きていかなければいけない私たち、音楽を聴いて自分やらなんやらだけをじっくり考える機会なんて意外とないのかも。そういう意味でも、特別な時間でした。でも非日常だけど、ちゃんと日常に繋がっていて、十音楽団見たあとってなんか心が軽くなりました。

あと毎回お腹がすいた笑(多分関係ない)

 

開かれた物語だからこそ、皆さん色々な想いをお持ちで、それをtwitterをはじめとする各種SNSで垣間見るのがとても面白かったです。誰かのときめきを通じて自分の喜びをまた探す、言葉で十音楽団を追体験してそれをまた拡散していくという形態は現代にぴったりでしたね。

ここまで計算されて作られていたのかしら、そうだとしたらプロデューサー藤井フミヤ凄いですよね…天才かな…。

 

今回は劇場型コンサートということで、前半は心ゆくまで音と歌声を楽しむ時間。なおかつMC無しという演出で自然と「観る」に重きを置いたライブになるのかな?と思っていましたが、第5章で一緒に遊ぶシーンがあったことは本当に素敵でした!そっか、これが一緒に遊ぶということなのだなと改めて実感。特に5章ではリズムが本当に効果的に使われていて、ロックンロールのグルーヴもあったりして、めちゃくちゃ格好良かった!

最初に前半部分を見た時はとても芸術的でただただ圧倒されたのですが、後半距離が縮まっていく感じがすごく楽しかったです!

 

十音楽団のメンバーに拍手を

今回のライブの忘れられないポイントが楽曲アレンジと、楽団の方々!アレンジは有賀さんがご中心になって手掛けておられるようですがとてもとても素晴らしかったです!

有賀さんといえば、TM NETWORKSelf Control (超名盤)でのベースプレイがとても好きだったので生でベースを聴けるだけでもとても嬉しいのにアレンジが非常に良かったので(良すぎたので)、今後好きなアレンジャーは?と聞かれたら食い気味で有賀啓雄様!ということに決めました。多分聞かれないと思うけど笑

20年以上前の曲なんて、その曲を20年以上聞いてきたファンの人達がいるわけで、そういう人たちを納得させつつ十音楽団という新しい取り組みに沿うアレンジにしなければならないという中々難しい挑戦だったはず。オーケストラライブを経たフミヤさんの伸びやかな表現力はもちろんのこと、この人はロックンロールからご誕生なさった方だったわ…ってポイント(どんなポイントだ)がバッチリ抑えられていて、最高でした。

滑らかなピアノ・弦楽器とパーカス・ギター・ベースが細かいリズム(グルーヴ?)の組み合わせの良さ、のれるし聴ける音楽でした。

そしてお一方お一方に見せ場があって、誰が欠けてもいけない楽団なのだなと思わずにはいられなかったです。素敵な音と演奏をありがとう。

 

短いけど特に好きだったところ書いとく…

☆岸田さん(keyboard)

     初恋の限りなくプレーンな感じが本当にOOPS!だった…とても好きです

☆かわ島さん(saxophone, flute)

    音がドラマティック!強弱がすごくはっきりしていて感情を上手く載せてる感じ素晴らしかったです。Slowly印象的でした。聴かせるサックス。

☆田口さん(guitar)

  風の時代と青春の道のギター本当に格好良かった…

☆藤井さん(percussion)

     ドラム入れないって話聞いた時まじか、と思ったんですけど笑、藤井さんのパーカス超カッコよかった! 細かい&力強いドラムとはまた違った柔和で艶やかなパーカス、十音楽団の中心だったと思います。コーラスも凄く素敵爽やかなお声 あとコンガ(たぶん)の色が緑で可愛かった!

☆吉田さん(1st violin)

     エナジェティックな音が印象的でした。きりりとしたサウンドだなという印象で輝いた音でかっこよかったです。

☆藤家さん(violin)

   すごくマイルドな優しい音でした、フミヤさんの伸びやかな声にとても良く合う。

☆清田さん(viola)☆林田さん(cello)

  僕が君を想う夜のアウトロ、ありがとう…!って感じだった有賀さんのベースとすごくい組み合わせだった!あとtrue loveの2番のAメロとても綺麗だったな

☆有賀さん(bass)

有賀さんのベースって弦楽器との相性がすこぶる良くてとても驚きました。セルコンの時はエレクトリックな正確さでまた良いのですけど、どの場面でもその曲の枠組みを作ってくださる感じ。本当に素敵でした! 

今回は指揮の方がいらっしゃらなくて(有賀さんが指揮していらっしゃる場面もありましたが)、とても難しかったかと思います。フミヤさんの独特のグルーヴが指揮でもあったのかな。

本当に素晴らしい音だったのでぜひ音源化して欲しいですー!

私がソ〇ーとかの人間だったら即ライブCDリリース(Blu-specで)するのだけどな

あっハイレゾ音源配信でもいいや…こういう要望どこにいえば良いのかな?FFM様…

 

藤井フミヤのライブ、やっぱり照明がよい

音に加えてとても印象的だったのが照明!今回の十音楽団の世界観を本当に良く表現していたと感じました。

武道館カウントダウンライブでも照明は本当に素晴らしかったですし、どのライブでも照明はこだわって作っていらっしゃるんだと思います。ただ今回のライブは、客席も照らすライトを使用して''武道館全体を舞台に変える''CDLのライトとは違って、ステージだけに絞って''十音楽団の物語を作る''ライトだったかなあという感じ。

  第1章の1曲目BIRTHなんかは深い青を基調としたライトで宇宙や聖なる超越した何かの中もしくはそれと対峙して自己を探究していく雰囲気でした。後の(3曲目)の命の名前では暖色系のライト、オレンジが使われていて、知っていく喜びといのちの温度がよく表現されていたかなという印象的でした。ライトだけでも物語があって、さらにそこに藤井フミヤのボーカルが乗っていて…非常に贅沢な2時間半でした!

 

以前も藤井フミヤのライブ床すごいからみんな床見て!!!!!と書きましたが(文章だけ見るとひどい)、本当に床のライティングだけでもチケットの価値あると思いました!毎回床のライティング技術高すぎる…

1番印象的だったのは第2章の冒頭部分。〈ふたつの点が…〉というところ、床が暖色系のライトで(会場によって微妙に違うのかも?、私が観た時はショッキングピンクのライトでした)スクエア型に照らされていたのですが、そのスクエアが徐々に広がっていったんですよね。〈君〉と出会って〈僕〉の世界が広がっていくのが照明と床でも表現されていて、素晴らしかったです!細かいところですがそこまで作りこんでいたんだなととても感動しました。

 

それから後ろのスクリーンも。フミヤさんはラジオ等々で「今回はセットが超シンプル笑」と仰っていましたが、すこぶる良いセットでした…!

   なんとなく『2001年宇宙の旅』の''モノリス''を連想させる形の縦長スクリーン。合計10本(左側3本 中央4本 右側3本)の、分割スクリーンなの面白かった。見た目的に凄くスタイリッシュになっていたと思います。

各楽曲の歌詞に合わせてふさわしい動的な演出がなされていて見応えありました。

1番わー!って思ったのは最後の曲!それまで森・空・星などなどを映し出したスクリーンに、それら総合した(重ね合わせた)ものを映し出していて、物語は全て繋がっていたことがよく表現されていたと思う。

床とスクリーンを組み合わせることで奥行と立体感があるステージになっていて見ていて引き込まれました。

 

 藤井フミヤはとにかく今が旬!

藤井フミヤはボーカリストとして今が旬!なわけですけど(断言していくスタイル)、今が偶然的に良い時期だとかじゃなくて35年分の経験値と戦闘力の集大成としての旬ですね。

今回はセリフであったりパントマイムであったりと色んな表現を駆使されておりましたが、ライブ自体ほぼ音が途切れない構成であったとともにフミヤさんの表現も途切れていなかった、というか全てが繋がっていたのが感動的でした。視覚的にも凄く面白かったですね。この表現も含めて演奏だったし十音楽団だったと思います。

というかパントマイムがとても上手くて、もー本当にあなた上手いんだからプロのパントマイマーになりなよ…って0.5秒ぐらい思った…笑 いややっぱいつまでもボーカリストでいてね…

でもそれがゴールじゃなくて、全部ボーカルに帰って来るんですよね、バレエっぽい伸びやかな動きも、必ず音に変わるんです。サウンドの素晴らしさと藤井フミヤの指先、髪の先までの表現が全て感情を持った声に収斂していく様は美しかったです。

 

全編を通して思ったのは藤井フミヤの声は、心を撫でる声だということ。

たくさんの人が、彼の声を聞いて色々なことを思ったはず。かっこいいとか恋するような憧れの気持ちはもちろん、美しさとかは包み込む愛情とか本当に色々。

私は特に感受性豊かではありませんが、2時間半ずっと色々なことを感じて考えて、感情的に忙しかった笑 終わってみてなんとなく心を優しく撫でられた感じだったなって思います。

お上手…って感動はもちろんあるのだけど、それよりもっと、面倒くさい思考の枠組みを取り払って、素直に感じることへ導いてくれる感じでした。こういう状態が本当の''自由''なのだろうなってちょっと思いました。すごく楽しかったです!

 

あとCDLの時もそうだったけど、ステージの上だけ重力小さいよね?ぜろぐらびてぃ…??ってずっと考えてたな笑

 

全曲感想書くとさすがにうざったくなりそうなので笑、何曲かに絞って残しておく。

☆風の時代

サビで全ての楽器が入ってくるアレンジとボーカルの強さが絡み合う感じが聞いていてとても引き込まれました。照明もとても素敵だったな。

一曲目のBIRTHが自分を得る物語で、次のこの曲が僕も君も歩みはじめるストーリーであったことが十音楽団の物語の芯の強さを象徴している印象でした。かっこいい曲。

 

☆下北以上原宿未満

アコギの音がとても綺麗。この曲めっちゃ可愛いよね。フミヤさん楽しそうでとても可愛らしかったです。

歌詞の中に出てくること、本当に些細な出来事なのだけど恋をしたらそれが凄く大きなことに見える感じが良いですよね。true loveとかもそうだけど小さい動作をどれぐらいロマンティックな色を塗って歌えるかに関しては藤井フミヤの右に出る人はいないと思う。

☆INSIDE

この曲の〈いつまでも君はそばにいるよ〉というフレーズが中々衝撃でした。普通、''僕は''君の傍にいるよとかいたいよってかきがちだと思いますが、そこが〈君はそばにいるよ〉なのがフミヤさんのリリックの凄さだと思います。いつまでも傍にいる君の存在がどれだけ大切で暖かいか言葉にしなくてもわかる感じ。この曲を歌う時のフミヤさんの伸びやかな声がとても印象的でした。一言一言を大事に歌う感じがたまらなく好きでした。

☆鳥になった少年の唄

最初にイントロ流れた瞬間この曲どっかで聞いたことあるな、、って思ってあっ鳥になった少年の唄じゃないですか…って認識した瞬間鳥肌でした。アレンジが控えめに言って神様からのプレゼント…十音楽団は神の使者だったのですね…って放心状態だった。

フミヤさんってやっぱりすごい大人の方だなーって当たり前だけど思うのですが、この曲の時は少年でしたね…こんなに荒削りな表現に一瞬にしてなれるのかと驚きました。大人のやさしさを経て少年に一瞬で還ってゆく声と指先の美しさ、一生語り継いでいきたい。

リリースから30年近くたってこの曲の完成型を見た気持ちです。私のファン歴的に何言ってんだってとこはあるけど…(すみません)

 

 ☆夜明けのブレス

  チェッカーズ時代から歌われ続けている名曲。フェス等フミヤさんの単独ライブ以外でもたくさん歌われていて、''みんながよく知る藤井フミヤ''を象徴する曲とも言えるかも。そんな比較的メジャーな楽曲が、十音楽団が紡いだ物語の最後を飾る曲としてまた新たに位置づけられたのは本当に見事だと思いました。

  無限なる世界から生まれた〈いのち〉の探求から始まり、〈君〉と恋をして、楽しいこともそうでない事も、多分なんだかんだあって、最終的に行き着くのが〈君のことを守りたい〉という境地であるのがなんとも藤井フミヤらしかった。

すごく個人的な話ですが、高校の卒業を控えたある日、倫理の先生から「隣人を愛しなさい。そして人を守りたいとか、助けたいと思うならばあなたも強くならなきゃいけないよ」みたいなことを言われたのを覚えています。当時はなんで?と思ってたけど今はなんとなくわかる(気がする)。

愛するってすごく大変ですよね。色々あるし笑。〈守りたい〉なんてもっともっと難しい。〈守る〉ためには自分を抜け出して、本当に愛する相手のために自分が''与える''存在にならなければならない。

自分を抜け出して相手の事を心底大切に想う強いあたたかさを持っていなければ、意味のある〈守りたい〉は発せないだろうと思います。

  だから、「夜明けのブレス」を初めてちゃんと聞いた時、そしてそれが1990年に発表された楽曲であったと知ったとき、藤井フミヤの持つ凛とした強さにとても驚きました。1990年、27~28歳ぐらいでこういう境地に至ったのはなんというか、ただただ驚きだった。彼の紡ぐ言葉の根本は「愛」なんだろうと思いますし、至ったというよりはこの人はその強さを最初から知っていたんだぐらいの説得力があると感じます。

 今回の十音楽団では、(私が聞いた限りでは)割とシンプルな、そして藤井フミヤの声が最も届くアレンジだった。

なにこれめっちゃ泣けるやば~~って思った(急に雑な感想)

藤井フミヤのボーカルと表現のある種の到達点なのかもしれない、と思えるぐらい素晴らしかったです。

そして、いいライブだった、終わるのが惜しいと思うと同時に、今日から色んな事をーひとのこともー愛していこうってちょっと思った。できるかどうか自信はないけど笑、背中を押された気分でした、ありがとう!

あと途中のワンコーラスをマイク無しで生の声で歌うという演出…

複数の会場で観させて頂きましたが、どの座席でも1音1音とてもはっきりと聞こえました。しかも声をすごく張っている音ではなくて、非常にナチュラルなニュアンスを持った音でした。さすがにうますぎなのでは……??

2時間半のライブのラストで、まさかこんなことがあるなんて…って半ば放心状態で見ておりました。

声量とか通りやすい声質とか技術的にも非常に素晴らしいので書き出したら終わらないのですが…何より生の、それこそ生きた''ブレス''として聴けたの、おそらく私の音楽体験として最も極上なワンシーンだったと思う。一生忘れないよ!

 

 

案の定長くなってしまいましたが、本当に素晴らしいライブでした。この感動を超えるライブにはもう行けないかもしれない…と思う反面、超えるライブがあるとしたらそれは間違いなくまた藤井フミヤさんの、新しいライブだろうと確信しています。

これを書いているのは2019年の9月22日なわけですけど、36年目の藤井フミヤさんがどんな新たな世界を見せて下さるのだろうと今からとても楽しみです。とりあえず秋のツアーKOOL HEAT BEATを楽しみに待ちつつ、36年目も素敵な音楽の旅を。

www.fumiyafujii.net

 

あ、十音楽団の音源or映像いつまでもおまちしてますね…!

 

 

 

 


最後に、これは完全に個人的な話なのだけれども、残しておきたいので記録しておきます。(''私向け''リクエストアワーだからね)

 

昨年10月、たまたま藤井フミヤのライブに行くチャンスが巡ってきた。

あの時のチケット、自分で取ってなくって、親が帰省のついでにどう?って取ってくれたもの。行こうかなって言ったのは私だったけど、本気で行くって思ってたわけではなかった。せっかく親にチケット取ってもらったし…ってちょっと仕方なく足を運んだ気がする。

当然予習はしていなくて、2時間置いてけぼりかなーって何となく思っていた。

だけど、一瞬で声に、音に、ステージに掴まれた。曲はそんなに知らないのに、ずっとあの音を、あの声を聞いていたいと心底思った。

そして今回の十音楽団。ずっと前から楽しみにしてた。あんまり期待しすぎるのは良くないって私も色々な場面で学んで来たけれど、そんな教訓は藤井フミヤの前ではどうでも良かった。

私は十分すぎるほどに期待させて貰ったし、その期待はあっさりと越えられた。本当に素晴らしい、ただただ素晴らしいステージでした。

''今までにないライブ''形式で、おそらくたくさんの試行錯誤があったのだと思う。そうやって練られた完成度、本当に圧倒的だった。私は結構冷めてるほうだと思うけれど、そんな私でも本当に様々なことを感じ、想ったライブだった。優しさ、愛情、美しさ、気品、色気、言葉に閉じ込められないものも。その全てが私の目に映る藤井フミヤだった。私が今までの人生で全く気がつかなかった感覚を沢山みせてくださいました。本当に面白かった。十音楽団行けて良かったなってきっとこれからも何度も思い出すと思う。

 

そしてフミヤさんの音楽と出会ってから、初めて自分の思ったことを書き残しておきたいと思った。

ほとんど独り言なんだけど、それでも本当にありがたいことに読んでくださる方もいて!感想を発信してくださる方もいて!音楽って誰かと繋がる手段にもなるんだって初めて知った。読んで下さった方、ありがとうございました。

音楽は1人で聴くのもすごく楽しい、皆で聴くのはもっと楽しい。単純なことかもしれないけど、私は初めて知りました。人生がまたひとつ豊かになった気がしている。

音楽が誰かの人生を豊かにするってどのアーティストやどの楽曲にも有り得るわけで、私の場合、そのきっかけがたまたま藤井フミヤだっただけなのかもしれない。

でも、それなりの数のアーティストを聞いてきたと思うけど、こんなに何かを感じてそれを言葉にしたいって思ったアーティストは藤井フミヤだけだった。たくさんいるアーティストの中で、たった1人彼だけだった。藤井フミヤに出会わなかったらこんな喜び一生味わえなかっただろうと強く思います。

 

だから、たまたまじゃなくて、きっとフミヤさんがくれたプレゼントだと思っておくね。 ありがとう。

 

またライブ行きます、

一緒に遊ぼーね!

 

今年の夏の藤井フミヤライブ絶対行った方がいい

唐突ですが夏って案外予定ないですよね。いや予定自体はあるんですけど、私はプールとか夏祭りとかあんま好きじゃないんですよ。だからそういう夏っぽい、<今年の夏だけの!特別な!>予定ってのは無いよね笑

という訳でひと夏の思い出的なやつ、いつも無縁だな~って思い続けて学生時代を終えようとしていた今年、私にしては珍しく七夕に藤井フミヤさんのライブに参戦してしまい、ばっちり今年の夏1番の思い出を作ってきました!
f:id:moffumofumofu:20190708001141j:plain
本当に素敵なライブで、なんかもう7月頭にして今年の夏はこのライブにいけたからもう本当に良い夏だったな…って総評できてしまうぐらい感動してしまいました。いやいやまだ夏じゃなくて梅雨でしょ、というツッコミは完全に無視します。

どーしよう行っちゃおうかな、、行けないこともないな、、って思ってる昨日の私みたいなあなた~!
絶っっっ対行った方がいいよ!!!!!
とても良いよ!!!!!ってことを書きます。
ライブのセットリスト、MCに関してのネタバレはありませんが一個も情報入れたくない!って方はご注意を。(たいしたことはないはずですが一応)

ライブの藤井フミヤ、魅力の四次元ポケット

藤井フミヤと聞いてどんなイメージを持ちますか?

あ、私は初めてライブに行くまで(=昨年10月まで)たまにヒルナンデスに出てくれるノリがいい歌うまおにーさん!って思ってました!(失礼)
大物歌手なのにヒルナンデス火曜準レギュラー扱いされてんの本当に好き…ってオタク話は置いておいて笑、藤井フミヤさんの声って日本に住んでいれば1度は聞いたことがあるかと思います。

独特だけど耳馴染みが良くて、短いフレーズでも藤井フミヤ!ってわかる声。だから私もライブ行ったことなくてもフミヤの声はわかるって彼の声を知った気でいました。
でもね、ここが最大の見せ場というか、藤井フミヤやっば…!って思ったポイントなんですけど、藤井フミヤのライブの声、CDと全く同じだけど全然違うのです
自分でも何言ってんだろうって思うけど笑本当にこういうしかないんですよね…(語彙力の敗北)

音程の正確さとかリズムのとり方はもう本当に流石で、かなりキーを下げるということも楽曲に必要以上のアレンジを加えることもない。そういう意味では、本当に知ってる声を聞けるしそこにはみんなが知っている藤井フミヤがいるはずです。
だけどライブはCDをそのまま聞くとかミュージックビデオをそのまま見ているのとは明らかに違う。もっと生きた声というか、その日の、そしてあなただけの、あなたが感じるままに存在する藤井フミヤも同時にいるのです。
フミヤさんの声は声量やリズム感などある程度数字化できるいわゆる歌唱力とくくれるもの全体のスペックが抜群に高いです。とにかく歌がすこぶる上手。でもそれだけじゃなくて、生ならではの、声の気持ちいい伸びとか、長い音のリズミカルな切り方とか、切る時にほんの少し混じる色気とか、ご自分で言ったセリフをご自分で笑っちゃう<格好良い藤井フミヤ>と<素の藤井フミヤ>との距離感とかとか…生でしか感じられないことが沢山あるんですよね!本当に魅力の宝庫というか引き出しの数多くない?四次元ポケット、、って思います…

ま、ライブって元々そういう生きたものだから当たり前といえば当たり前なのかな笑

私は昨年までCDで聞いてきた曲を大音量の生演奏で聞くのがライブの醍醐味!って思ってたしCDに近ければ近いほど最高って感じだったんだけど、フミヤさんのライブに行ってから次はどんな新しい藤井フミヤを見せてくれるんだろうってワクワクするようになりました。ライブ、本当に楽しい!

2019年の藤井フミヤは旬!

えーでも別に今年じゃなくても、、って思っちゃうじゃないですか。私もそうでした!2016年に大人ロックってアルバムのPRでヒルナンデス出てた時(当時私はアンジャッシュ渡部ちゃんのオタクだったので火曜ヒルナンデスは必ず視聴してました)、1曲サラッと歌をお歌いになっていて、えっ…うっま…ライブ行こうかな、、とは思ったんですよね。でも結局初めて参戦するまで2年ぐらいかかりました笑 そういうもんよね。だから今回のツアーを逃しても全然チャンスはあります。

ただ声を大にして言っておきたいのは、藤井フミヤさんご自身が今がボーカリストとして一番旬だ、と仰っておられること。これって中々凄いこと!
news.yahoo.co.jp


旬って過ぎてから、あああの時旬だったなってわかるじゃないですか。春キャベツとか春に食べてもそんなに美味しいと思わないけど、夏にキャベツ食べるとうわあ春キャベツ食べたいって思うじゃないですか…笑
でもフミヤさんは今が旬って今言っちゃってるんですよ~~

私もファン歴一年未満だけど笑、一応チェッカーズも含め色々映像を見させて頂きました。今が1番旬という言葉は、おそらく本当というか、まあフミヤさんのことだから次のツアーとか来年また今より上手くなってる可能性はめちゃくちゃありますが笑、過去だけに焦点を当てたら(将来を考えなければ)、今が1番上手いと思います。別に昔はそんなに…ってことはもちろん全然ないのですが、失われない若さはもちろん、円熟さと瑞々しさが共存してるのは今が1番かなぁって感じ。

今年の十音楽団は新しい!

読み方じゅうおん楽団って思わなかった?私は思ったよ!
色々音楽関係のサイトで記事もあるので読んでいくのもいいかも。
www.oricon.co.jp

私も前情報からこうなるのかなーとか色々考えておりましたが、とてもいい意味で裏切ってくださいました。まだまだツアーも始まったばかりですしそこは書けないけど(ツアー終わりぐらいにまた書きます)、音楽って面白い!って思えるライブでした。

インタビューやメディア出演でも<これまでにないライブ>というワードが多く使われていました。十音楽団の楽器構成に近いライブはきっと他にもあるのでしょうが、世界観と表現と会場の熱気はまさしく<これまでにないライブ>かな!
何より、藤井フミヤという歌手がデビュー35年を迎えた年に<これまでにない>ものを創ろうとしている、音楽の探求者であることが本当に素晴らしかったし嬉しかったです。藤井フミヤはずっと追いかける人、それは彼の若さだし強さだと思う。
あ、35年分の曲知っとかなきゃダメってことは全然なくて、曲知らなくても声聞くだけであっという間に時間が過ぎます。ソースは去年のライブほとんど曲知らない状態で参戦したのにライブ終演時にはフミヤさんのオタクになってた私です笑

みんなチケット買お…あと床がすごい

いやそもそもチケットないと見に行けないじゃん!って話ですよね。
公演スケジュールや一般チケットに関してはフミヤさんの公式HP
www.fumiyafujii.net

に色々書いてあります。
今回のツアーは全26公演。各種チケットサイトにも情報あります。

  • チケットぴあ⇒

https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b1937102

  • ローチケ⇒

藤井フミヤ|ローチケ[ローソンチケット] コンサートチケット情報・販売・予約

  • イープラス⇒

藤井フミヤのチケット情報|e+(イープラス)

  • ticket board

35周年記念公演 藤井フミヤ “十音楽団” | ticket board

大都市圏、結構sold outなんですよね…

でも大丈夫!私は7月7日公演のチケット、当日(7/7)に取りました笑
というのもですね、今は本当に素晴らしい時代で各種チケットサービスにて、行けなくなっちゃった、、(こういうのあるよねぇ…リセールされてる方も別の公演とか見に行けてますように…)って方がチケットを定価でリセールすることができるんですよね!
フミヤさんのチケットを取り扱っているticket boardでも、各公演の10日前から当日の朝10時までチケットを購入することができます!
藤井フミヤ チケット | ticket board
1枚定価8000円+諸々手数料756円=8756円。クレジットカードで一瞬で買えるんですよ…キャッシュレス社会はいいぞ! ソールドアウトって書いてある会場も場合によっては見れる可能性があるので覗いて見てください!
もちろん、ちょっと足を伸ばして遠征も全然ありだと思います。というか私もどっか行きたい笑 現地観光してお昼or夕方に藤井フミヤによる最高の音楽体験を味わう夏!超素敵!

リセールに関しては直前に買ったから席がどうとかはあんまりわからないですが(多分関係ないはずです)、後ろの席でも藤井フミヤのライブマジで床凄いから気にしないで!!!!!
って書くと本当に意味不明だな笑、フミヤさんのライブ、照明がとても良いんですよ!今回はホールだし、、、って正直思ってたんですが笑そっか、ステージの床を舞台にするんだ....!ってめちゃくちゃ感動しました。みんな床見て!!!!!自然とフミヤさんも目に入るから!!!!!(力説)床と藤井フミヤのシンクロがすごいので皆さん見てください。こういうのは案外二階席とかの方が見えるかも。会場によるとは思いますが、どんな場所でも楽しめるのではないかなーと思います!

案の定長々と書いてしまったけど笑、今年の夏の思い出に藤井フミヤの35th anniversary concert 十音楽団はいかかですか?きっと素晴らしい夏になりますよ!

私もあと何回か行くのですごく楽しみです!また一緒に遊ぼうね!

あと7月10日にNewアルバムも出るので!楽しみですね!
www.fumiyafujii.net

話題の本『 チェッカーズの音楽とその時代』に関する考察とPeriodの向こう

 

先日発売されたスージー鈴木さんによる『チェッカーズの音楽とその時代』に関して、発売直後にここが~~~って反論するのもなあ…という思いもあり、前回の記事では評論についてはなんとも言えないって濁した部分もありました。ちょっと時間も経ったことだしせっかくだから濁した部分、すなわちこの本に対する疑問点を書いておきます。あんまこう…気持ちの良いことではない部分もあるので読み飛ばしてくださっても構いません。ただ、後半(最後にの部分)はできれば読んでいただきたいな~~~!と思うので、、一応目次を置いておくのでそちらからでも飛んでみてください。

 

疑問①参考文献と引用箇所について

 本書の参考文献は以下のリストでした。

 参考文献 207pより引用
THE CHECKERS SEVEN』(ソニー・マガジンズ
チェッカーズ『もっと!チェッカーズ』(扶桑社)
高杢禎彦チェッカーズ』(新潮社)
売野雅勇『砂の果実 80年代歌謡曲黄金時代疾走の日々』(朝日新聞出版)
『Complete The Checkers』(ソニー・マガジンズ)
秋山計画『Checkers in Tan Tan たぬき(高級本格本2)』(扶桑社)
速水健朗円堂都司昭栗原裕一郎・大山くまお・成松哲『バンド臨終図鑑』
『ロングロードーチェッカーズ全詩集』(学研)
スージー鈴木『1984年の歌謡曲』(イーストプレス
スージー鈴木『イントロの法則 80’s 沢田研二から大瀧詠一まで』(文芸春秋

下2冊はスージーさんご自身の本なので完全に参照程度で用いられているかと思うので実質8冊。
で、直接引用がある本に関しては以下の通りです。

 

参考文献名 引用回数 詳細
高杢禎彦チェッカーズ』(新潮社) 3 ①P13、14 『ギザギザハートの子守歌』             ②P73『WANDERER』                          ③P79『Blue Rain』
売野雅勇『砂の果実 80年代歌謡曲黄金時代疾走の日々』   (朝日新聞出版) 2 ①P18『涙のリクエスト』                       ②P29、30『星屑のステージ』
『Complete The Checkers』   (ソニー・マガジンズ) 5 ①P45『HEART of RAINBOW 愛の虹を渡って』藤井郁弥の言葉(PATi・PATi85年9月号からの引用表記)                    
②P70『I Love you, SAYONARA』大土井裕二の言葉(PATi・PATi87年6月号からの引用表記)                
③P74『WANDERER』 鶴久政治の言葉(PATi・PATi増刊STYLE②87年7月からの引用表記)                  
④P102『Cherie』鶴久政治の言葉(PATi・PATi89年8月号からの引用表記)                            
⑤P141『夜明けのブレス』鶴久政治の言葉(PATi・PATi増刊STYLE90年12月からの引用表記)                                    

 抜けているところがあればお知らせいただきますとありがたいです…

※あとなぜか参考文献には表記されていませんでしたが、P27では売野さんの、P138 ではフミヤさんのウェブインタビューが引用されています。ウェブ記事でもちゃんと引用表記しないといけないのでは…?論文じゃないからいいのかな


参考文献8冊って大学生の期末レポートにしては多いけど卒業論文にしては全然少ない量かなと思います。そこ比べんなwって話だけど笑、…もしかしてこれぐらいの資料でも出版OKなら私でも本出せるのではと思いました反省します。

 

でもすごい分かるんですよ、チェッカーズに関して私もなんかかきたいなーって思った時に資料探すことから始めたのですが、あんまりないんですよね。頑張れば当時の雑誌とか会報とか探せるだろうけど音楽的内容が載ってるかは確証が持てなくって…時間も費用も限られてるから無限にコレクトする訳にもいかずっていう。
資料自体はきっとたくさんあるんだろうけどその詳細が割と謎に包まれてるので、相当情熱を持ってないと手を出しづらいってのもあるかと思います。当時の会報こんなんでしたよ~ってことご存知の方シェアしていただけたら…
そんな中で、唯一の救いが音楽的内容にかなりフォーカスされてることが明確だったTHE CHECKERS PATi▷PATi FILE 1984-1992。本書でも引用されていますが、私が不思議に思ったのはその引用箇所です。
まず、あの本はすべてのメンバーのインタビューがたっぷり入っているのに、引用されたのはフミヤさん、ユージさん、マサハルさんの3人のみ。作曲面で相当な貢献があった尚之さん、リーダー武内さんの言葉がないの、音楽評論としては疑問を覚えます。あとクロベエのドラムめっちゃほめてたのにインタビュー引用しないの…?って思ったかな。モクさんの言葉、せっかくならチェッカーズ現役時代の言葉を引用していただきたかった。
個々の引用箇所も見てみると、①はダブルトラックに関すること、②は当時のバンドの状況について、③④⑤は曲出しとシングル化決定のいきさつに関することでした。うーん、いいんですよ、いいんですけど、当時の作曲・作詞においてどういう思いが現れていたのかとか何に影響を受けていたのかとかもっと大事なーチェッカーズのメンバーにしか語れない言葉を引用して考察していただきたかったです。レコーディング法とか選曲って近しいスタッフさんでもわかってたことだと思うし(あ、でもともすればスタッフ任せになりそうなことがメンバーによって行われていたことが明らかなのは本当に良いことではある)、音楽評論なのに音楽の制作背景ではなく制作過程にフォーカスした言葉を引用されていたのは勿体ないというか。そこらへんもっといろんな言葉を読んでいらっしゃるだろうになぜこのチョイス?って不思議に思いました。この引用だったら結局チェッカーズの音楽の本質ー彼らが提示したかった世界観の中心ってとこまでは掘り下げられないと思います。音楽制作の過程とジャンル分類やそこからリスナーが感じた印象にしか話を広げられないから、せっかく引用するのであればもっといろんな選択肢を検討して頂きたかったです。


全然余談ですがモクさんの本(私は読んでません)、文体が独特すぎん?笑 引用箇所でちらっと読んでびっくりした…ああいうタレント本の多くはゴーストライターが書いてるみたいな話ありますけど、、超読みづらいよ…笑(失礼)


疑問②チェッカーズは80年代のバンドだったのか?

 私がスージーさんの本で1番引っかかったのは以下の一文。

大好きだったチェッカーズが80年代に閉じ込められていく。『運命』に関してー139P

ここ読んだときに、ああこの本は客観的音楽評論の服を着た私的なチェッカーズ像の再構築だと思いました。
なんというかその、まあ本のタイトルからして時代を語らないのは有り得ない話だしわかりやすい措置として話の軸を80年代にしぼってそこら辺の印象を濃く書かれているのかもしれませんが…。
『運命』に関しては、なかなか挑戦的な楽曲だったのは事実だと思います。でも、それは「80年代のバンド」であるチェッカーズが90年代当時の流行を取り入れたから違和感・挑戦している感があったのではない。チェッカーズがある程度固まってきたバンド像に自ら投げかけた疑問符とそれに対する回答から生まれた新しい扉だったはずです。楽曲や内的要因によって80年代に閉じ込められていったというよりは、異質な存在であった『運命』を借りてスージーさんご自身が、私的な’’私の・僕のチェッカーズ’’を80年代という枠組みにとどまらせようとした=80年代に閉じ込めたかった、という感じなのでしょう。

ファンの人の中には、80年代ノスタルジーのひとつとしてチェッカーズのことが好きって人もいるだろうし、チェッカーズ自体が好きかつその中でも特に80年代が好きって人もいると思う。そういう意味でチェッカーズは80年代のバンドだって主張も有りだと思います。

ただ、チェッカーズは80年代だけがその活動の全てだったか、って言われると決してそうではありません。90年代に出たアルバムOOPS!(8th)、I have a dream(9th)、Blue moon stone(10th)はいずれもチェッカーズにとって音楽面で新しい試みがなされたアルバムでしたし、解散という完結に向かって世界観の作り込みもより色濃くなった作品だったと私は思います。
売上など経済的な存在感では80年代が少し上かもしれません。しかし「流行として消費されるスター」を脱し、自分たちの音楽を手に入れた中期とその延長線にあり新しい''らしさ''の追求が行われた後期もチェッカーズの正史です。バンドの''らしさ''が最も高まったのはヒットスターの呪縛から解放されて演奏力も向上した後期だったと思います。

だから欲を言えば、80年代とそれ以降という時代区分とそれに付随する印象で語るのではなく、チェッカーズ正史における初期中期後期の時代区分で語って欲しかった。
そうすればもっと色んな人が満足できたんだろうと思います。
この辺りシングルだけ見てもわからんよね…仕方ない…。

あと個人的なことを書くと私は80年代に対して全く愛着がないです。生まれてないし、なんかよくわからんしさ笑  チェッカーズ好き~って言うと80年代の曲が好きなの?とか昭和歌謡が好きなの?って聞かれることも多々あるのですが、どっちもそんな興味ないんですよね…単にチェッカーズが好きってだけ笑。だから個人的にチェッカーズは80年代のアーティストって言われることに反発があるのかもしれないです。 

 
疑問③この本の対象読者は誰か?

 ヒットを生み出すためにはどんな商品でも絶対買ってくれるコアファンだけじゃなくて気に入れば買ってくれるライトファン予備軍の一般大衆を巻き込むのが大事、みたいなことを小室哲哉さんが仰っていたのですが、この考え方はどんな活動においても当てはまることだと思います。

今回の本のメインターゲットは、、一概には言えないしわかりづらいからフラストレーションもあるんですけど、有名な曲は知ってるけど…って層だったのかもしれません。そちらの方が数的には多いわけで本の売上に直結するんだろうなあという見方もできないことは無い。あんま良くわからんけど。
ただ、音楽徹底評論という触れ込みが事前にあったことが混乱を招いた感はあったと思います。そんな言葉使われたらコア層も読みたいな!って感じるだろうし、そういう期待も少なくなかったはず。でも、残念ながら内容としてはその期待にそうものでは無かった(音楽評論もありましたが徹底という程ではなかった)ために賛否両論だったかなあって感じ。
明確にライト層だけをターゲットにして入門書みたいな形で書かれた方がよかったのかもしれないですね…

 とにかく、結局は「社会現象となったグループの意外な音楽性」語りという視点から抜け出せていないんじゃないか、という印象を受けました。その視点に嘘はないし確かにそうなんだけれども、多くのファンが想う・知っているのは「しっかりとした音楽性と世界観をもったバンドが初期において社会現象を起こした」ということなんですよね。初期の作品の中にチェッカーズの音楽性と世界観が十分に現れているかというとそうでも無いので、デビュー当初の社会現象の要因が完全にバンド固有の音楽性だったとは言いきれないんですけど。でもずっと寄り添ったファンが好きだったのは流行りもの・社会現象としてのチェッカーズじゃなくてチェッカーズというバンドだったのは間違いないことです。社会現象ありきじゃなくてバンドありき。

スージーさんは「強烈なファンではなかった」と本書P4で明記されてるので、そこら辺の認識がファンの方とは違うんでしょうね。同じ時代を知っている人の一視点として読む分には十分ではありますが。
でも冷静に考えてそんなにファンじゃなくても一冊書ける勇気と情熱ははすごい。仕事が出来る人ってなんに対してもやる気がある人なんだろうなと実感する就活生の日々なのでそういうとこ羨ましいです。

あと、あとがきにチェッカーズベストソングスとして12曲ピックアップされているなかで(シングル曲8曲・アルバム曲は4曲)、アルバム曲はいずれもチェッカーズのバンドとしての歩みを象徴するようなストーリー性を持った曲なのに一曲だけTOKYO CONNECTIONが選ばれているのが不思議でした。ユージさんのベースプレイが好きで…ってことかもしれませんが、GOあたりのサウンドメイキングについての感想も聞いてみたい。

ここまでいろいろと書いておいて申し訳ないですが、とても素敵だなと感じた点、好きだった点もあるので書いておきます。

素敵① 本の在り方とそれに対する皆さんの反応

 2019年に出版される本としてのあり方は正解だったと思います。
というのも、有名人やマスメディアが発信することを一方的に受け取るだけの消費の仕方は失われつつあります。インターネット・SNS全盛期の今、受け取った情報に対して共感の気持ちや、私はこうだと思いますよという思いを発し拡散することは誰にだってできることになりました。言ってしまえば誰でも音楽評論家時代ですよね。いい時代ですよ、本当に。めんどくさいことも多いけど笑
だから完成度は置いておいて人にどう読まれるか、どう伝えるかが重要な今のご時世にはいい話題だったと思います。私はずーっとみんなのチェッカーズ論的なやつが読みたかったのでこの本に対する感想としてみなさんが当時のことも含め語ってくださってるのを読むのが凄く楽しかったです! 

素敵②公平な量の解説

 チェッカーズの強烈なファンではなかった」スージーさんにしか「見えてこなかったものもある」という冒頭の言葉を実感したのが、初期の楽曲に関する解説部分。

芹澤さんや売野さんの言動も参照されておられたのはなるほどって思いました。
私はNANA以降のオリジナル期大好きっ子だから、こういうシングル全曲レビューをやったとしても初期の印象はかなり薄いものになると思うし、まじ郁弥の声超可愛いとか尚ちゃんのサックスイントロは痺れるし耳に残るとかめちゃくちゃ簡単なことしか言えないと思う笑 だからシングル全曲に対してほぼ差のない同量の文章を書くこと、チェッカーズがプロデュースされる側にいた時期のことをプロデュースを担う人達の言動も含めて語られていたことは割と距離があるところからの視点をお持ちの方にしかできないかな~と思いました。
あとコード進行やビートに関して、私は全く知識がないのでただ頷くだけでしたが笑、読んでわかった気になれました笑

 

それとインタビューパートは分量も内容もすこぶる良かったのでそこだけでも本当に読む価値はあるかと思います。ジョーク多すぎて本心が見えないマンであるマサハルさんにあそこまで語らせるの素直にすごいと思いました!私マサハルさんに会ってもなんも語れんと思う、一番手ごわそうだもん。

客観的考察と私的なバンドへの愛が詰まった良き本としてまとめたのですが、その評は変わりません。(ここでの客観的ってのはビートとかコード進行に対する考察について言えることです。)

受け取り方に関してだいぶリテラシーが必要ではあるし愛の形は人それぞれだろうけど、抵抗なければ読んでみる価値はとてもあると思っています。彼らの解散からとっくに25年以上の歳月が流れた2019年に出版されたこと自体とてもラッキーだったと思うし、これを機に色んなチェッカーズ像があぶり出されていく過程がとても面白くって、私はいい時期にファンになれたな!って思います。

全然関係ないですが、前回の記事マサハルさんにもRTされててびっくりしました。読んでくださったのかしら。

 

 

最後にーチェッカーズのファンの方へ。

 
ちょうどデビュー35周年のアニバーサリーイヤーということも相まってチェッカーズへの視点が増えてきていること、そしてそれをリアルタイムに読んで聞いてそうだよね~~とかうわーおそういう見方もあるのね~なーんて言えること、本当に幸せに思っています。チェッカーズは好きな人がいる限りずっと現役のバンドだって初めて書いた時、ちょっとだけ私のわがままな解釈と願いを込めて書かせてもらったんだけど、今それが紛れもない現実であることが本当に嬉しい。

あとちょっとスージーさんの本がいい意味でも悪い意味でも話題になっているこのタイミングでものすごく実感したのが、ファンの人も含めてチェッカーズだなあということ。
って書くとメンバーに申し訳ない部分もありますが笑、チェッカーズが解散した今現在において、メンバー本人にチェッカーズの話題を出すってちょっと躊躇うことだと思うんです。(私が小心者すぎるだけかも??笑)

もし私が''プロの''音楽ライターとかで享さんやフミヤさんにインタビューできるチャンスが与えられたとしても、ぶっちゃけ''今''のこと・最新の活動や作品について聞きたいって強く思うと思う。フミヤさんも尚ちゃんも享さんもユージさんも、今の音楽活動がとても魅力的だから。彼らは決して過去に生きる人じゃない。今、本当にこの今、新しい音楽を作り新しい言葉を紡ぐ人達です。だから私は今のことをとても知りたい。

じゃあ誰がチェッカーズを語るのか?って話なんですけど、それはきっとファンの人達だと思う。
もちろんメンバーが語ってくれるにこしたことはないですし私も読みたいとは思うんだけど(再三書くと、メンバーにインタビューなされたという部分ではスージーさんの本は素晴らしかった。本当に感謝です。あとめちゃくちゃ羨ましい)、別に彼らの言葉がなかったとしても、ファンの人が知っている事実とそれに関する考察だけでチェッカーズの存在意義と魅力の再構築は十分できるのでは~と思います。(謎の目線)

チェッカーズはすごくライブを重視していて、楽しみにしていて…というバンドでした。それは純粋に音楽を愛し音楽への憧れこそが活動の原点にあったから当然といえば当然なのですが、それよりもっとー藤井郁弥の言葉を借りれば、チェッカーズにとってのライブはファンも含めて「一緒に遊ぶ」場だったからだと私は思います。
チェッカーズは俺達が遊ぶからみんなも遊びに来てねってスタンスではなくて、''「一緒に」遊ぼうぜ!''を貫いたバンドだった。チェッカーズはそれだけファンのことを愛していたと思うしそれだけみんなの近くにいた人達でした。あ~~~~当時のファンの人羨ましい~~~~~

さらに素敵なことに、チェッカーズのファンの人ってちゃんとその愛に応えていました。喩えアイドルとしてのファーストインプレッションを持っていたとしても、入口が''なんか可愛い7人組''だったとしても、きちんと彼らの音楽を捉えてきたし、それを楽しんできたんだと思います。FINAL後半の愛と夢のFASCIST→it's alright→See you yesterday→90s.S.D.Rなんてゴッリゴリのアルバム曲三昧なのに超盛り上がってるからね笑 最後なのに売上的代表曲じゃなくてライブで映える格好良いチェッカーズソングが選曲されたことは何よりもファンへの感謝と信頼があっての事だと感じます。

そしてそのファンの方の思いは今でもバリバリにあるわけで、だから今回の本に関して賛否両論の論争があったのかなあと。このバンドとファンの関係すごく素敵じゃないですか?私はとても好きです。最高。

最後のライブでWe're the Checkers!ってみんなでコールアンドレスポンスするシーンがチェッカーズ10年間の1番のハイライトだと私は思います。そしてその言葉はきっと今でも残っているはず。最後にファンの人も含めてWe'reって言葉を使ったのは感謝と信頼と愛情と、''これからのチェッカーズ''をファンの人達に託したかったからなのでは、と思います。

チェッカーズは新しい曲を作るバンドとしてはもういないかもしれない、でも格好良くて最高な、ファン想いのバンドだったことを知り今もそれを言葉にできる人達がたくさんいる。ファンの人に託された''これからの''ーより正確に言えば''解散後のチェッカーズ''こそがもしかしたら藤井郁弥の言う「Periodの向こう」にある世界なのかもしれません。

 

 

 

いやー本当にどういう立場で書いてるんだろ~~って自分でも不思議なのですが笑、まあ所詮ファン歴5ヶ月ぐらいの人が言ってることなので笑って流して下さいね....笑
とにかくチェッカーズが語られ続けるバンドであること、それを実現させてくれるファンの人本当に素晴らしいし大好きって話。そういう関係が35年続くって相当すごいよ、って思ういたいけなファンでした。以上!


今回の文章めっちゃ最終回っぽくない??って感じだけどこれからも全然書くのでまたブログ遊びに来てください~!
チェッカーズの当時の思い出話とか音楽評論とか藤井フミヤの可愛さ・かっこよさとか唐突に色々送ってくださるのも大歓迎です…!私はなんでも読みたい病なので!(the 他力本願)

 twitter: @genjipie0923


『チェッカーズの音楽とその時代』に関する感想

先日(2019年3月29日)、スージー鈴木さんによる『チェッカーズの音楽とその時代』が出版されました。この日付のちょうど35年前が『ザ・ベストテン』でチェッカーズが初めて一位を獲得した日であり…といった文章で始まるチェッカーズに関するほとんど初めての音楽評論本。

35年とかよくわからん、いたいけな新規ファンの私が思ったことを書きます。明らかにネタバレがありますので未読の方はご注意を!まだ読んでないチェッカーズ好きな方、おすすめですので是非!

 

 

私的にこの本の読んでよかったポイントは以下の4点でした。

  1. 音楽評論本でありながら、いちリスナーとしての感覚が盛り込まれている
  2. 曲出し、レコーディング、演奏法に関するユージさん・マサハルさんのインタビューが収録されている
  3. あえてシングル曲だけに絞って語られている
  4. スージーさんの文章の巧みさ
音楽評論本でありながら、いちリスナーとしての感覚が盛り込まれている

スージーさんの超個人的ともいえるチェッカーズに関するエピソードが、私の当初の想像の70倍ぐらい多く書かれていてとても興味深かったです。

音楽評論本は当時の音楽の流であったり当時の社会状況であったり、かなり大枠で話を進めていく手法の方が一般的な中、「パーソナルヒストリーの中にチェッカーズを位置づけるという少々差し出がましい手法を用い」*1て書かれたことには大きな意義があると思います。

チェッカーズは立派なロックンロールバンドかつメディアにおける時代のアイコンでもあったと同時にありのままの青年達でもあったんですよね(たぶん)。その華々しさや格好良さに憧れた人も、次第に音楽も振る舞いも大人っぽくなっていく彼らに自分自身の人生を重ねた人もたくさんいたのだろうと思います。チェッカーズは手の届かないスターじゃなくてなんとなく人生の戦友みたいな存在になってくれそうなフレンドリーな雰囲気がありますよね。そういう彼らの魅力が、スージーさんのエピソードから垣間見れて面白かったです 。後代の世代からすると「80年代」は勢いがあって本当に良かったよねぇといった懐古主義的文脈で語られているがゆえに現実味がない節があるのですが、本作はきちんと生活感ある出来事の中にチェッカーズの存在が捉えられて、あチェッカーズって本当にいたんだって思いました。当たり前だけど。

もちろん、しっかりとした音楽的な解説も書かれていて、マニアな方でも読みごたえある内容だと思います。スージーさんはこの本に関して「音楽的に徹底評論」*2と語っておられたのですが、私は頭のカタい評論というよりはより私的なチェッカーズ像の再構築であり、当時を知る人ならではの''私の/僕のチェッカーズ''だと感じました。厳密にいうとスージーさんとチェッカーズという語り口だという方が正しいかな。

いちリスナーとしての視点と音楽評論家としての視点が絶妙に混ぜられているところが非常に読みやすいポイントでもありさすがプロだなぁと唸るポイント。だからとても読みやすく、あ~流行ったよね好きだったわ~的なライト層にも響く内容だと思います。

あと各シングルの売り上げ枚数と順位もデータとして非常に興味深かったです。私は作品自体の良し悪しを測る指標として枚数を用いるのはあまり好きではないですが、客観的に(経済的に)存在感を測る指標としては便利ではあると感じました。

とにかく、チェッカーズの存在が時代やら芸能史やらの大枠における一大ムーブメントとしてではなく当時を共に過ごした人の手によってより近しい存在として語られたこと、それが形に残る書籍として流通したことが本当に素晴らしいことだと思います。スージーさんに感謝。

曲出し、レコーディング、演奏法に関するユージさん・マサハルさんのインタビューが収録されている

なんというか、よくぞ聞いてくださった!っていう気持ちになるパートでした。解散後はチェッカーズに関するインタビュー、しかも曲作りやサウンド面に関しての話なんて本当にきちんと機会をつくらないとできなかったと思うのですが今回の出版にあたり実現したことをとても嬉しく思います。

個人的にはマサハルさんとユージさんの、メディアでの語りぶりがいい意味で変わってなくてめっちゃチェッカーズやん…って思いました笑。

マサハルさんが影響受けた音楽についてあんなにまじめに語ってるの初めて読んだかもしれない。チェッカーズのころはとにかく面白い人でインタビューでもジョークのぶち込み加減がなかなかだったので少々はぐらかされてるな…と感じていましたが笑、結構色んなことを語ってくださっていて読みごたえがありました。マサハルさんっておしゃべりだよね笑

ユージさんは、ミニサミという素晴らしき内輪な場だと本当に飾らない率直な方だなあという印象を受けたのですが、メディアの前だとすごくしっかりとみんなの状況を見つめた言い方ができる人なんだなあと改めて感じました。スージーさんは本書でしきりにクロベエのドラムとユージさんのベースをほめていらっしゃって、それゆえに影響を受けたベースプレイなども細かく聞いてくださっていてうれしかったです。ユージさん推せるよなあわかるぅ…

ユージさんのインタビューの中で具体的にどうやってアレンジを決めていったのかについて細かく語られていたのが最も印象的でした。スージーさんの解説も併せて読むとより立体的に各曲を再構築できるかもしれないですね。スージーさんの解説は割とはっきり好き嫌いと各曲の完成度的なことについて記述されていたので見方を広げるきっかけにはなると思います。

私自身、曲のクオリティが高い/高くないを判断するほどの知識量と判断力が無いですしそもそも良曲かどうかは好みの問題だと思っているので、解説が正しいかどうかに関してはなんとも言えない部分はあるのですが…ひとつ言えるのはチェッカーズのシングル曲って試行錯誤の物語だなあということ。

この本に収められているマサハルさん・ユージさんのインタビューを読む限り、チェッカーズには音楽を作ることに対しての''天才''がいなかったのではないか、と思います。(ここでの天才は小室哲哉さんみたいな、とにかくプロデューサーとして自分で全部レールがひけて主導権を取れる人という意味。)

チェッカーズはおそらく7人全員が手探りで何かしらをやろうともがいていた、だからこそ色々な曲が生まれたんじゃないかと。彼らの楽曲のバラエティの豊かさはその試行錯誤の足跡。音楽にとても詳しい人からしたらその試行錯誤の結果の作品群を物足りないと感じることもあるのかもしれませんが(インタビューを読む限り基本自分たちはまだまだ…だと一番思っていたのはメンバーだったと思う)それがまた格好良いと思います。明らかに得意なジャンルもあったのにそこにとどまろうとしなかったチェッカーズの成長性が素晴らしい楽曲とステージを実現させたのでしょうね。

本書を読んで改めてシングルを時系列で聞いてみると本当に、なんかよくわからないバンドだなあと笑。後半なんて夜明けブレスみたいなスタンダードバラードもあれば運命みたいな前衛的な曲もあるしチェッカーズってどんなバンド?って聞かれてもいやーなんでもありよね、あの7人でやってさえいれば全部チェッカーズよね…としか答えられないですよね。

 

あえてシングル曲だけに絞って語られている

8thのOOPS!と9thの I HAVE A DREAMはシングル曲が全く収録されていないわけで、チェッカーズの音楽世界の中心はアルバムでありツアーだったと考えてる身からするとシングルだけ切り取って語るのって相当チャレンジャーだなあーて思ったのが本音ですが笑。その時代というサブタイトルからして時代に対してーファンでない一般層に対してのプロモーションもかねてリリースされていたシングル曲を中心に語られるのはしかるべきだとも思います。

あえてシングルだけに絞って、というのはほぼ私の憶測ですが、チェッカーズってほとんど語られてこなかったから語るべきことが山ほどあるんだと思います。今回は一番イージーなとっかかりとしてシングルに絞られたんじゃないかと。ライトなファンも含めて読みやすい構成になった利点はもちろんのこと、シングルだけで一冊にできるというチェッカーズの意外な?奥深さが体現されたのは本当に素晴らしいと思います。

スージーさんの文章の巧みさ

正直スージーさんって野球好きな人!ってイメージだったので(昔週刊ベースボールのコラム読んでたなあ…)音楽方面ではあまり存じ上げなかったのですが、ユーモアにあふれている人だなあという印象を受けました。本当に面白いし読みやすい。

 

というわけで、いい本でした。ぶっちゃけ活字離れもいいとこの私、書店で新発売の本を買うなんて何年振りだろうというレベルでしたが買ってよかったです。スージーさん絶対ユージさん推しだから一緒に語りたいと思ったのが一番。

 

ここからは蛇足といえば蛇足なのですが…書きたいことは書いておこうかと思って(私向けリクエストアワーだからね)書いておきます。

チェッカーズのポップさを実現させたのは誰だったのか?

私がインタビュー集でとても驚いた21stシングル『Friends and Dream』についてのお話ー

フミヤ「Aメロやったっけ、あれ、もともと」

マサハル「そうそう」

フミヤ「サビのメロディから入るでしょ。あれがAメロだったの。で、どうしてもそれをサビにしてくれって。俺が政治に頼んだわけ。で、’’うん分かった’’ってわかったような顔しながら、作り直してきたときにまたサビになってなかったわけ(笑)それで、いやこれは絶対にサビだって言って」

モク「じゃけん、俺たちは初めて聞いてそう思うやない。マサハルはつくりよってそうじゃないわけ。やっぱり」

THE CHECKERS PATi▷PATi FILE 1987-1989 694ページ

この発言、なかなか衝撃でした。全く曲を知らない人でも一聞きでわかりそうなサビのメロディをAメロにぶち込んでいたというマサハルさんの音楽的センス、ある意味天才的だと思います。

スージーさんの本ではマサハルさんの曲は王道JーPOPに通じるキャッチ―なポップ性が「けれん味の無さ」*3等の表現で語られていて、私も多いに納得しました。無駄に付け加えておくと、その魅力を実現させたのはマサハルさんの素晴らしき才能だけでなくメンバー同士の助言もあったからだと思います。ここら辺、中々聞けないことではあるので検証しづらい部分ではあるのですが…。あとチェッカーズにはアレンジの鬼(と勝手に私があがめている)武内享さんがいるからね…そこまで話聞いたら相当分量も増えるだろうし面白いのではと思います。個々の才能は本当にすごいのですがそれを対等に高めあう関係にあったことが完成度を高められた要因だったんだろうな。

再結成の扱いについて

チェッカーズって異常なぐらい再結成の話題を出されてるじゃないですか笑。もはや笑えるぐらい。この本でも複数回その話題がでていていて、なんとなくそういう愛情もあるんだなあって思いました。

個人的なことを書くと私は解散後に生まれたので、チェッカーズはその存在を知った最初の瞬間から''既に完結していたバンド''なんですよね。残念ながら彼らと同じ時間を共有できなかったし一緒に未来を夢見なかった私にとって、チェッカーズは存在自体が作品という印象があるかと思います。(だから解散って最終回みたいな、悲しいといえば悲しいけれどちゃんと終われて良かったね!という気持ちが強いです。そしてあの幕引き・完結方法はとても格好良いと思っています。)そういう意味では大好きだけど少し距離があるのかもしれません。

きっとリアルタイムでチェッカーズを見て体験した人ー''私の/僕のチェッカーズ''を語れる人からしたら、同じ大切な時を過ごした戦友みたいな彼らが活動状態にあるバンドとして存在していないことが哀しくて本当に惜しいと思うだろうし、再結成を~って考えちゃうかもしれない。そういう気持ちも分からないでもないし未だにそういう話題がでること自体チェッカーズの絶大な人気を物語っていると思います。多くの人にとっての''私の/僕のチェッカーズ''は一度たりとも失われていない、愛すべき存在であり続けているのだろうと感じます。

 

でも、まあ私が言うことでもないんですけど笑、音楽って永遠に終わりがないコンテンツなわけで再生デバイスは変化していくだろうけど作品自体は好きっていう人がいる限りずーーーっと残っていくものだと思うんですよね。チェッカーズも解散したし完結しているけど別に消えたわけじゃない。ずっと残っているからこそ私みたいな世代にも響いているのです。前レインボーの感想にチェッカーズは好きっていう人がいる限り現役のバンドだって書いたのですがまあそういことですよね笑(急に雑なまとめ方)

活動してる/してないとか解散してる/再結成するとかはそんな気にすることでもないんじゃない?って私は思っています。そんなことどーでもいいくらい楽しいコンテンツがチェッカーズにはたくさんあるよ!ってことはきちんと書いておきたい。

 

チェッカーズの音楽とその時代

チェッカーズの音楽とその時代

 

 

 

まーーーた長文書いてしまった…これぐらいの勢いで課題レポートもESも書ければなあと思う春の夜。

*1:本書4ページ

*2:2019年3月24日のツイートより

*3:本書142ページ

#クロベエかわいい

80~90年代にTwitterがあったとしたら、私がきっと1番使っていたであろうハッシュタグは#クロベエかわいい だったと思います。
ということで一緒にカツ丼食べたい系ドラマー永遠の第1位クロベエについて思ってることを。いつも以上に単純なことなので軽く流してください笑。


#加入経緯かわいい


有名な話ですがキューティーズって別バンドにいた時に山に埋めるーって脅迫まがいの引き抜きされたってやつ!初めて聞いた時なにそれどの漫画?って思ったくらい鮮やかなお話笑 でもあのメンバーだったら普通にやりそうな感じがまじでチェッカーズ笑。
チェッカーズって細かい話もすごく映画チックで面白いし、よくあんな個性豊かなメンバー集まったなあって運命的なものを感じます。


#共同生活かわいい


(マサハル)クロベエは食パン1斤かって食べないうちにカビだらけにする名人でね(笑)。それも問題になった(笑)。そういうもったいない金の使い方は良くないて。(中略)俺が横で寝てて金縛りになって苦しんでいるのに起こしてくれないんですよ(笑)。
THE CHECKERS PATi▷PATi FILE 1990-1992     45p

上京してマサハルさんと一緒に住んでた頃のお話。このふたりのほのぼのした空気感が本当にかわいい。年下組はいいぞ。クロベエはうっかりさんというかマイペースというか、凄く気遣いすぎじゃない?ってくらい優しい(後述)のに時々飄々としてる部分があってとてもかわいい。

あと共同生活しているのに真夜中にツアー先で聞くためのウォークマンテープを作成していたクロベエを「それじゃあマサハルが寝られんけん」って注意する郁弥さんのエピソード、とても微笑ましかったです。あーお兄ちゃんなんだなーって笑

メンバーの誰かが今仕事しとると思うとなんか後ろめたくて遊べんねぇ。

(他メンバーのソロ活動について)やっぱり気になるよ。辛い思いをしているんじゃないだろうかとか 、大変なんじゃないだろうかって(笑)。
THE CHECKERS PATi▷PATi FILE 1987-1989 712p

なんて気遣いの人なんだろう!私なんてバイト早上がりの時まだ働いてる先輩横目にドヤ顔でお菓子食べてるのに笑。
クロベエは年下だからみんなに可愛がられてたイメージだけど彼自身もみんなをすごく大切にしていたのが本当にかわいいし素敵。愛されるドラマー。

 決して口数がやたら多いわけじゃないしシャイなんだろうなあって思う部分もあるのに暖かい優しさが伝わるキャラクター、本当にかわいい。

#かわいいだけじゃない

 

ー芸能界(仕事)に染ってない?
染まらないように努力します。染まったら魅力ないと思う、俺たちって。
ー染まらないためになにか努力してるの?
自然にやってるだけです。''作る''ということは染まるということですから。
THE CHECKERS PATi▷PATi FILE 1984-1986 409p

 


10代でデビューしているので、芸能人なんだけど少年性が色濃く残っていたりして、初期では「普通の人」であることに憧れたり、中期ではバンドとしての音楽的課題に向き合う事に悩んだりして音楽を作ってた姿が印象的な方でした。
チェッカーズって初期は爆発的に売れてるわけで、10代でその渦に入っちゃったら相当流されちゃいそうだけど、その中でもちゃんとチェッカーズとしての魅せ方を知ってる人だったんだと思います。

アイドルって少なからずつくられた存在であって現実と半分混じりのファンタジー感が魅力の一つ。その点チェッカーズはすごくありのままで登場したので既存のアイドルの概念を壊していった存在でもあるのにばっちりアイドルなのが面白いですよね。中期ー後期にかけてはアイドル的マーケティングはほとんどなくなっていきますが(それでもアイドルとも呼べたと思うし、アーティストとアイドルを両立させた凄いバンド)、なんか変に気取った感じで都会的になるってことはなくて、クロベエが言う通り''自然にやってた''のが魅力だなあと改めて思いました。

メンバー全員に言えることですがただみんなについて行くね!ってスタンスじゃなくて各々色々考えてたことが伺えます。その方向性が合ってるのかバラバラなのか怪しいとこが面白いんだけど、ここぞって時の団結力こそチェッカーズかと。


あと他のメンバーは割とフランクに自分たちってここがかっこいいんだけどここがダメだよね・課題だよねってインタビューでも割と俯瞰的視点で語っているところが見られたのですが、クロベエはこの曲はいい曲だとかこうやってレコーディングしたとかの情報をより伝えていて、素敵でした。きっと俯瞰した視点、バンドとしてどうしていくべきかってこともたくさん考えていたんだろうとは思うけど、それを伝えるのは自分じゃないって思ってたのでは。そういう意味で、バンドのありのままをプレーヤー視点で伝えることが出来る貴重な存在だったかもしれないですね。

 

#ドラム格好良い

 

私はそんなに詳しくないから客観的にうまいかどうかとか知らないんだけど(これ毎回書いてて笑える)、クロベエのドラムってダンスミュージックとポップスとロックの狭間にある、まさにチェッカーズのためのドラムだなーって思います。
チェッカーズって最初から最後まで売上でも動員でもメジャーな存在。OOPS!とか結構マニアックな音だけど、分かってくれる人だけわかってくれればいいや、じゃなくてこういう面もチェッカーズだからねって提示されていただけで決してマニアのための音楽に徹してたわけじゃないと思う。
まあ彼らのキャラクターによる部分も大きいとは思うんだけど、音楽的にはとにかく気持ちいいかつかっこいい音を提供しなければメジャーな存在でい続けられないわけで、その根幹がクロベエのリズムなのでは。

ダンスミュージックの、ビートを刻むことに集中した軽くてひっかかりのない音でもなく、ロックの重たいインパクトのあるドラムでもなく、ポップスの歌を引き立てるリズムでもない。上手く言えないから雑に言語化すると、その3つのジャンルを融合させたチェッカーズのドラムですよね。適度な重さと気持ちの良いアクセント、チェッカーズの強みであるコーラスワークを引きたてているけど十分ドラムソロも聞かせられるっていう感じ。

 

オレ、右向け右みたいのがきらいだから。少しでも他と違うことでこだわって、それをチェッカーズでやりたいと思うから。
ー流行を気にしないってこと?
まあそういうことかな。俺はこだわりますよぉ、自分に(笑)

ドラムの叩き方ひとつにしても、レコーディングとライブとじゃ結構違うし。ずっとレコーディングしてると、一つ一つ強く叩かないと伝わらんとか思ってやるし、ライブにはライブのベースがある。
THE CHECKERS PATi▷PATi FILE 1987-1989 427p(SCREWに関するインタビューより)

 

チェッカーズって音数の割にきちんとリズム隊の音が聞こえるの、きっと結構こだわってレコーディングしててそれを生かしたミックスを作ってたからなんだろうな~。チェッカーズってアイドルソングとか80sポップスだと思われてる側面があるから(私も思ってた時期あった笑)余計アルバム聞いた時のグルーヴ感にやられるよね…このギャップを生かしたマーケティング、今でもできると思うよ、ポニーキャニオンちゃん…


あとチェッカーズはダンスも含めてかなり動くステージをやってた人たちだから、どんなにギターやベースが素晴らしいプレーヤーであっても屋台骨のドラムがしっかりしてなければうまくいかなかったのではないかな~と思います。
seven heavenツアーとかよく動けんな…ってぐらいフォーメーションありきのステージなのに、全然音がぶれないんですよね、意味がわかりません笑どうなってんだ…って毎回思うけどきっとクロベエがぶれないっていう信頼があったんだろうなあ。

ほとんどのメンバーがナチュラルに「チェッカーズはライブで魅せるバンド」って分析できるのは本当にクロベエのドラムがあったからですよね。
基本後ろでずーっとビート刻んでるクロベエがふとした瞬間にニコニコする時の可愛さったら…お菓子あげたくなる笑

彼のドラムの良さを味わうためにはチェッカーズの全アルバムの全曲聞いて…としか言えないんだけど笑、強いて選ぶとしたら、私は以下の曲をあげたいな~って思います。

☆CRACKER JACKS
モクさんボーカルの曲って、モクさんがThe男!って感じの人だからサウンドが全部太くて格好良いんだよね、だからすごく好きです。Gold Rush(OOPS!)とかもそう。
この曲のドラムは基本音量も大きめでリズムもざっくりとる感じが素敵。アルバムだと次の曲が鳥になった少年なんですが、その冒頭が割と儚いビートで対照的になっていて、うわー表現すっご!って思えます。

☆100vのペンギン
みんな大好きOOPS!の、この時期にしては珍しい7人だけの音。16ビートドラムとベースのめちゃくちゃ動いてるのになんか冷淡なメロディ、藤井郁弥のドライな歌い方、はねてるのに下向きなカッティングギターと尚ちゃんの1度聞いたら忘れられないサックスのフレーズでできたAメロ、Bメロは私の中で90年代最高の邦楽のひとつです。〈 過去の消えたこの街受け継ぐ日が近づく〉のあとのブレイクで1回音小さくして、ベースとギター聞かせたあとにもっかいドラムが大きくなるの、何度聴いてもはっとさせられます。


☆FINAL LAP
泣く子も黙る変拍子チェッカーズの後期の集大成。Finalの音源は3万回ぐらい聞きました。聞けばアブラーズはまっちゃうやつ。言語化するのはナンセンスなのでとにかく聞いて~~!

チェッカーズってライブだとアレンジの鬼だったからCDと全然違うじゃん~好きってなるので一曲で2回美味しいバンドですよね。興味深かったのがクロベエがマサハルさんのソロツアーに参加した時のお話。

クロベエの場合、譜面が読めんから完全コピーしないといけないし。THE CHECKERS PATi▷PATi FILE 1990-1992 44p

(クロベエとマサハルの対談より)

これなかなかびっくりしたんですけど、楽譜読めないならどうやってアレンジ伝えてたんだろう…後期なんてあんなに変態アレンジの洪水だったのに…笑。

郁弥さんがチェッカーズゲネプロは大雑把だから見たらびっくりするかも的なことを仰ってたので(ボーカル陣のフォーメーションについて言ってたのかも知れない、不確定で申し訳ないです)、どの辺までスタジオで練ったりしたんだろうとか気になる。
完全コピーで覚える所までって毎回大変だっただろうなあ…考えてた人もすごいけどそれをショーとして魅せられるレベルにまで引き上げてたクロベエ凄い。


最後に、とても好きなお言葉を。長いけど全部引用させてもらいます。

チェッカーズのこと好きだよ、ホント。オレがソロやらないのって才能のなさとか照れとかそういう部分もあるけどたぶん…チェッカーズが好きだからじゃないかな。ナオちゃんやフミヤやモクやマサハルがソロをやり始めて活動を続けてても、それはあるイミで俺の中ではチェッカーズの一部なのね。ちょっとメンバーのこと離れて見てても、ガンバッてるなあって声援送ってるオレがいて…。で、オレもチェッカーズでガンバってドラムたたかんといけん!って思ってて。なんだかんだ言ってもオレにとってチェッカーズが1番の遊び場だし、仕事場なんだろうなぁ。
だからね、チェッカーズ以外でこっちのほうが絶対に面白い!って思ったら、ソロだろうが俳優だろうがとっくに始めてると思うんだよね。でも、チェッカーズよりおもしろいものなんてオレには出てきそうにないけど。
THE CHECKERS PATi▷PATi FILE 1987-1989 712p

クロベエの言葉を借りれば、チェッカーズは''遊び場''。あの7人が奏でる音楽は格好良い音の作品だっただけでなくって、言葉を交わしながら、笑いあいながら''遊ぶ''ためのパワーでもあったのだと思います。
そしてそれは、2019年の今でも、彼らを直接目撃していない人達にも、ちゃんとしっかり響いているよって私が保証する笑。

クロベエがずっとチェッカーズを大切にしているように、私も彼らの音楽を大切に味わおうと思います。

 


もっと可愛いとこ語るだけのはずだったのになんかズレちゃったな笑
チェッカーズに関するハッシュタグ考える遊び意外と楽しいので皆さんお暇な時にぜひ。ちなみに私が使っていたであろうハッシュタグ第2位は#郁弥は色気のナイアガラ か#マサハルまじ宇宙人のどっちかだと思います。

 

アブラーズの自由な夜

アブラーズのミニサミ定例会に参加して来ました。相変わらず夢見心地でMCとかぼんやりとしか覚えていないので個人的な感想を…

きっとこのページを読んでくださっている方は既におわかりと思うのですが、アブラーズのミニサミ定例会とはアンバサダー武内こと武内享さん、アルマジロ大土井こと大土井裕二さん、リットル藤井こと藤井尚之さんが月に一度行っていらっしゃる「月に一度の脱線タイム」です。

…とここまでのわずかな行の説明に突っ込みどころと疑問点多くないですか!?笑
アブラーズのメンバーのニックネームは仕方ないとして(未だにわかりません…リサーチ不足を笑うついでに教えてください…)「月に一度の脱線タイム」って公式の告知and申し込みページに載せてるアーティスト初めて見た!ってかなりびっくりでした。

色々探したけどイベント内容に関する明確な公式説明ページがなさげだったので安心と信頼のtwitterで探したところ、どうやらトーク即興曲やカバー曲の演奏がメインの楽しいイベントとのことで、さらに毎月尚之さんの公式Facebookで配信されている冒頭30分ぐらいを視聴しなんか楽しそ~と思い参加してみることに。所詮は大学生なので課金対象について相当迷ったのですが今のうちに見といた方がいいよ~!的なアドバイスを頂き、最も私に似合わないオシャレタウン下北沢まで足を運んだのでした…皆さん本当にありがとうございました。

 

以下面白かった点を…

アブラーズとは自由である

っていう命題があったとしたら絶対真なんですよ。とにかくひたすら自由。
イベントの内容構成としては近況やなんとなく思ってることなど文脈に関わらず言っていく→そこで出た話題から即興曲演奏、もしくは話が一段落したところでカバー曲の演奏をしていくというスタイルなのですが3人とも統率が取れているのか取れていないのか全くわからないほど自由で笑、めちゃくちゃ面白いのです…!
やっぱミュージシャンだしチェッカーズっていう共通のバックグラウンドがある訳で音楽寄りのフリートークなのだろうか~と思ってたんですが、アブラーズそんな単純な人達じゃないですね!笑がっっっつり日常会話でした!なにこれすごい。1番すごいのは本当にゆる~~い日常的な会話なんだけどちゃんとした楽曲に飛躍させられる点です。享さんが♪ユージが俺の話を聞いてない~とか歌い出した時はまじかよ…って思ったんですけど笑、音はとてもかっこいい!さらにユージさんも尚之さんもすごく自然な流れで声と音を乗せていくのは感動すら覚えるレベル。ああいうのたぶん練習しても無理な人は一生無理だと思うしまさにアブラーズならではって感じでした。

ライブって少なからず非日常体験なわけで、会場の扉を閉めたらそこだけ別世界ってとこがすごくワクワクするポイントだと思っているのですが、アブラーズっていい意味で日常の延長線なんですよね。音楽が好きな昔からの仲間がただ集まっておしゃべりしている輪の中に私たち参加者も入れてもらってる感じというか。別に今日こっから別世界です!って強く線引きする訳でもなくじんわりと広がっていくアブラーズの音楽をみんなで一緒に楽しむことが出来て
そこにはステージの上の「ミュージシャン・アーティスト」とそれを見る「観客」なんていう社会的役割の違いなんて無くなっちゃうような自由さと距離の近さがあると思える素敵空間でした!

それにしてもトークは本当に自由だった笑 メールのフォルダ名で20分ぐらい話したり笑、近所に住んでる人の話とか笑 、「脱線タイム」というかもはや線路がないぐらいの自由度でした。ラジオやって欲しいな笑


Groove of a-bra:z

ミニサミでは御三方全員がアコースティックギターという構成。どちらかといえばロック好きの私はもしかしたら音薄いって思っちゃうかも、、と無駄に心配してたのですが、全っ然そんなこと無かったです!むしろ心配してごめんなさい…

私はバンド音楽経験者ではなく、コード進行や奏法に関しての知識がほとんど無いのでどうしても言葉ありき、歌い方ありきで音楽を楽しみがちなのですが、チェッカーズは最初聞いた時からわーおベースの動きすっご!ドラム超気持ちいしサックスかっこいいしギターのリズム細か…!って思えるレアなバンドでした。
ミニサミでは楽器構成が変わっているものの、音楽に別に詳しくもないし意図的に注目しようとしていなくても思わずおっ!ってなる高揚感は健在。基本即興曲って打ち合わせもなんもなく御三方も探り探りで演奏していらっしゃるとは思うのですが、必ず誰かがきちんとアクセントも装飾もつけてくれるのです。アコギ3本だと大人しく思えちゃうけどそこを平坦な曲で終わらせない技巧と華やかさこそがアブラーズの真髄なのではないかな、と思います。そしてその技巧と華やかさをもたらす音楽的高揚感をグルーヴと呼んでいいのなら、アブラーズのグルーヴは客席をも包み込む快適な温度と変なノリ(褒め言葉)からなる唯一無二のもの。経験して損は絶対に無いのでみんな行こう…ってめちゃくちゃ言いたくなるやつです。

今回のカバー曲、たぶん70~80年代のヒット曲だったと思うので(無知ですみません....)90年代生まれからしたらかなり難しかったんですが、それも楽しかったです。たぶんそういう時代の曲って今どきの曲からしたらテンポもゆっくりだったり(たぶん) 、リズムより歌重視なイメージなのですがアブラーズの手にかかるとかなりリズミカルかつ聞かせる歌になっていて面白かったなあ。

ついでに?御三方についても少々…
☆享さん
とにかく全身でリズムとってて、ギターのストロークも大きくて、見てて本当に愉快なひと!あとリズムのとり方がとても細かくてどんなにバラードの曲でもすごく細かく刻んでいらっしゃったのが印象的。アブラーズのグルーヴの中心。
なんかレインボーでもそうだけどお酒もタバコもやるしべろ~みたいな独特の擬音語が多くて豪快な人っぽく見えるけど、ずっとユージさんが送ってくるメールについてるフォルダ名が一緒でわかりづらい~!って仰っていてすっごい真面目でもあるんだろうなあって面白かったです。
低音になるとめちゃくちゃ味わい深い歌声なのも魅力的でした!
あといつもおしゃれ上級者な服装なのにめちゃくちゃお似合いなの尊敬します。

☆ユージさん
うわぁ本物だ…ってめちゃくちゃ感動した笑。アブラーズで1番の推しメンです…(無駄に宣言)

ほのぼのおにーさん!って形容したの誰ー!?本当にその通りじゃないですかー最高!って思いました。すごく柔らかい喋り方なんだけど時々享さんに対してざくっといくとこが面白かった笑
ベースの時はゴッリゴリなんだけどギターはめちゃくちゃ滑らかですごく艶っぽかったです。アルペジオっぽい弾き方とか永遠に聞いてられるなあってくらい綺麗でした。格好良い…!
アブラーズの中で1番高音が気持ちいいお声で、なんというか抜け感と開放感が同居してる声って感じでした(意味不明)。ユージさんのソロライブ絶対行くー!
帽子姿がめちゃくちゃ可愛かったです~おしゃれー

☆尚ちゃん
(享さんと比べたら)控えめなお喋りなのですが、享さんとユージさんの会話が盛り上がったらすっとはけたり、終わった頃にもういい?みたいな感じで来るの美味しいとこ全部持っていっててすごく楽しかったです。
即興曲でのアクセントの付け方がすごく鮮やかでやっぱ尚ちゃんは違うぜ…って思いました。
尚之さんのボーカルはなんて言うか色っぽいんだけど丸みがあって味わい深い。途中で演歌っぽい曲も歌っていらっしゃったのですが全然くどくないのにこんなに聞かせられるんだな~って驚きでした。
ニューアルバム楽しみですね!

あと最後のI have a dream
3人とも凄く一語一句を噛み締めるように歌っていらっしゃって、とても素敵だったんですよね。言葉の重みとか温度とかを味わいながら大切に歌ってくださる感じが、あ~アブラーズってI have a dreamのことすごく大切に思ってるんだなって感じました。

フミヤさんは(私がCDLで聞いた限りでは)噛み締めるより滑らかに歌う方だと思うんですが、当然ご自身で詩を書いてるわけで、噛み締めなくても感覚でその曲の世界をわかってるんだと思います。だからこそもっと高度な表現、一時的な感情だけじゃなくて、もう人間性とか生き方までもがのってるような歌い方ができるんだろうなって思います。

アブラーズは、一つ一つの言葉を歌いながら、弾きながら味わっておられ(るように見え)て、なんというか演者ではあるんだけど私たちリスナーと同じこと(味わうこと)も同時にやっていらっしゃるというか。ステージの上の人ではあるんだけど私たちと同じ境地にいるように感じます。だから、距離が近い。でも演奏はまさにプロというか、味わいつつのれるっていう絶妙なバランスの上にあってとてもかっこよかったです。

どっちもすごく素敵だし、同じ曲でもこう違うの本当に面白い。しかもそれを映像とか音源だけじゃなくてリアルタイムで体験できるなんて、リスナーとして本当に幸せだなーって思いました!

正直ミニサミって公式サイトに情報無さすぎて新規にはハードル高そうって思ってたんですが、実際行ってみて、あーこれ説明難しいよねーって思いました笑。
ライブとも言えるしトークショーとも言えるしでもそのどっちでもない感じもあるし、なんともアブラーズらしい・アブラーズにしかできないこと。だから既存の言葉に当てはめるのがとても難しくって、「月に一度の脱線タイム」ってのが1番しっくり来る説明だなって納得出来ました。さっすが享さん。

f:id:moffumofumofu:20190301155940j:plain

Gardenいいハコだった。煙草とアルコールの匂いがなんとも大人。

残念ながら次の日バイトだったので打ち上げほとんど参加せずにお暇してしまいアブラーズのアルバム買えなかったのが唯一の心残り…また参加しよー!

「チェッカーズのサイドボーカル」はたぶんミスリード

怒られるの承知で書きますが、つい3年ぐらい前までチェッカーズって藤井フミヤと愉快な仲間たちで構成されてるアイドルだよね~~ って本気で思ってました(超失礼)! だからチェッカーズがバンドだって知った時めちゃくちゃ驚いたし、自分たちで作詞作曲してたってのも衝撃でした。

でも何より驚いたのは、チェッカーズにはボーカルが3人いたってことでした。

だってさ、藤井郁弥がボーカルだったらもうそれだけで100点満点中1万点(つまりは最強)のバンドになるの確定みたいなとこあるじゃないですか。もう彼以上のボーカリストなんていないって言ってもあながち間違いではないし、彼さえいればバンドとして事足りてそうなのに、さらにボーカルいたの…?しかも2人も....?何そのお祝い懐石料理的なやつ。豪華すぎるでしょ…

あとサイドボーカルと形容されることが多いお二人ですが、私はボーカルが複数人いるバンドを聞いてこなかったのでサイドボーカルという言葉に全く馴染みがなく、バンド内での立ち位置が不思議な人達だなあと思っておりました。

 

で、実際彼らの音楽を聞いてみて思ったのは、チェッカーズにおける「サイドボーカル」というワードはあくまでもステージでの立ち位置に起因するものであるということです。 サイドボーカルって言葉だけ聞くとなんとなくおまけ感があるかな~って思っちゃうけど、あくまでも立ち位置的にリードボーカルのサイドにいるってだけで、きちんとベースボーカルであったりハモリコーラスであったり時にはリードボーカルを務めたりとそれぞれ重要な役目があったんだと思う。決して''あーなんかいたよね''っていう感じの人達ではない。Finalライブのメンバー紹介でフミヤさんはお二人のことを「ボーカル」って仰ってたので少なくとも郁弥さんはおまけ的なサイドだとは全く思ってなかったんじゃないかな。

結局何が言いたいかっていうと、サイドボーカルってあくまでも立ち位置的な意味だから役割までもサイド(=おまけ的)って解釈しちゃうとモクさんとマサハルさんの魅力を取りこぼしちゃうから気をつけてね!ってことです(最初からそれ書け)。

いやーサイドボーカルというワードのミスリードは罪深い。 そしてインタビューとか読む限り、郁弥さんが1番そこをわかっていらっしゃるというか、、彼の中であの二人は決してサイドなんかじゃなくて、チェッカーズの大事なメンバーであり立派なボーカルだって認識が確かにあったんだと思えてなりません。 モクさんマサハルさんがリードボーカルをとった曲について、この曲はマサハルが歌った方が映えるとかこの曲の世界観は本当に高杢らしいよねって仰っているのがとても印象的でした。 

Gold Rushについてー自分が歌う時と他の人が歌うときはやっぱりー「違うよね。やっぱ高杢高杢の男っぽいみんなついてこい的なイメージがあるし。」THE CHECKERS PATi▷PATi FILE 1990-1992 84p

 

誤解さcherryについてー「俺が仮歌を歌ったんだけど俺が歌うと嘘って分かんの、最初から。政治はほら、あんまり感情が出ない歌い方だから、淡々と聞こえてプリティーになったな。」THE CHECKERS PATi▷PATi FILE 1990-1992 202p

 

これいい曲だから自分が歌うね~!ってスタンスでもおかしくないし、藤井郁弥ほどの実力がある人だったらそれが許されると思うんですけど、郁弥さんは全くそうではなく、あくまでもバンドとして、「誰が歌ったら1番格好良いチェッカーズを提示できるか」をずっと考えてくれてたんだと思います。さらに各々の良さを把握してそれに応じた歌詞を書いてきたわけで、なんというかチェッカーズにおける藤井郁弥は単にバンドの顔ってだけじゃなく強みを把握した上で細い舵取りをできてた人だったんだろうなあって感じます。

話が脱線してしまいましたが、モクさんとマサハルさんも、おー面白い…!ってなる要素があるお方なので個人的に好きな点書きます。客観性の欠片もない独り言なので軽く流してください。

 

☆モクさん

一直線のダンディズム

歌声はかなり低いのに、おしゃべり声はそこまで低くなくて聞き取りやすいのが意外な方でした。見た目はほとんど変わらないとにかく硬派な人。

正直どこまで本心で言ってたのかなあって思うところが無いわけじゃないのでインタビューから人柄を考察するのはナンセンスかなーとも感じますが一応…笑

「俺は変わらないよね 。変わっちゃいけないんだよ、仕事の立場としてね。キープしていかなきゃいけないし、それが攻めていかなくちゃいけないことでもあるから。違うのはやれることとコレはやっちゃいけないことと分別がついてきたってこと。でもあとは変わっちゃいけない、じゃなかったら魅力が無くなっちゃうわけだし。」THE CHECKERS PATi▷PATi FILE 1990-1992 302p

 

blue moon stoneの時のお言葉。この方は変わらないことに重きを置いていてそして型から入るタイプなんだと思います。良くも悪くも形式的でどっしり構えてる人。 なんかダンディズムを感じますよね。

チェッカーズって少なからずアイドル的に捉えられた部分があって、それを突っ撥ねるでもなくむしろ楽しんでたのがすごいとこなんだけど、そんな中で圧倒的ダンディズムを誇るモクさんって異質だったと思う。''かわいい''だけのアイドルに迎合することがなかったのは全員そうなんだけど良くも悪くもここまで変わらなかったのは彼自身だけだし、そこが強い個性だと思います。チェッカーズ自体は割と主体的に格好良く変わっていけるバンドだったから余計こういう存在って飛び道具とかフックとして貴重だったと思います。いいキャラしてんなー好き。

全然関係ないけど、今ってアイドルなんて飽和状態で、みんな必死になってキャラ付けで差別化図ろうとしてて本当に大変だと思うんだけど、モクさん的なダンディズムポジションって多分どこにもいないから模倣したら相当目立てるとは思う、人気になるかどうかは別として笑

低音ボイス

この人の音楽的な良さはアカペラでよく出る、、というかチェッカーズのアカペラはこの人抜きに成立しなかったのではってぐらい、いい仕事してます。juke box センチメンタルとか。ボイスパーカッション的なことやってるので相当リズム感あったんだと思います。藤井郁弥のリズム感まじやばみなので隠れちゃうのも仕方ないけど笑アカペラアルバム出して欲しかったなぁ。

 

余談ですが、柳川高校卒業~~!実家の超近所~~ってことで無駄に親近感持ってます笑 あの辺の昔からある本屋さんなんて2、3件だし私も同じ本屋さんで教科書買ったりしたかなとか近くの回転饅頭食べたりしよったんかなとか考えちゃう…笑

 

☆マサハルさん

この方は7人で並んでとる写真で1人だけどこ向いてんだろうって目線をしてることが多くて笑、とても印象的でした。染まっているようで染まっていない人。 チェッカーズって大いに不良的であったのにこの人はあんま不良じゃないのもまた面白い。すごく淡白な感じが好きです。 後、タレント的な意味で単純に面白い人だと思う。マサハルさんはインタビューでも少なからず笑いを取りにいってるんだろうなあって言動がある人ですよね。

Q将来どこに住みたいですか?

A家。               Only  The checkers 176p

QandA史上最も脱力系の受け答えだと思いました。変わった人だなあ。 楽しませようとして楽しませる、意図的になんでも仕掛けたい人というか、平たくいえば''みんなの''期待に答えたいがんばり屋さんなんだろうな。90年代中盤あたりから音楽番組のトークの比率が高くなっていきますが、そこまでチェッカーズが続いていたらまた違った活躍が見れたのかもしれないですね。

インタビュー読むかぎりではこの人って意外と?自分を強く持ってる人だったんだなあって印象。

 どんなふうに成長していきたい?
最終的には幸せな過程を基盤にして自分のやりたいことをしてるお父さん THE CHECKERS PATi▷PATi FILE 1984-1986,280p

バンドの一員としてどうなりたいかより1人の人間として人生をどう設計したいかってことがすんなり出てくるあたりわりとバンドという組織から独立して自分を持ってたんだと思う。まあ若さゆえにってのもあったかもしれないけど。

後半の方ではソロ活動もユニットもやっていらっしゃってかなり目立ってた。決して影のサイドボーカルではない、むしろこんなに出ちゃうの?って思っちゃうぐらいの露出だったけど笑、創作意欲が強いひとの関心の矢印がずっと外向きにあったのはすごくいいことだと思うし、折角の才能だから音楽に携わり続けてほしい。(謎の上目線)

 

とにかくメロディーメーカー

チェッカーズは素晴らしい作曲家が4人もいた稀有なバンドだけど、他3人がその時代とそのアルバムにマッチした音を作れる変幻自在なタイプだったのと対象的に鶴久さんは割とスタンダードな曲を作り続けていた方だと思う。だからシングル向きだったのかも。染まらず、流されず自分を持ってる人だからできたことなのでは。

残念ながら私は曲の構成やコード進行に対して知識がないので書けませんが、スージー鈴木さんの以下の解説は面白かった。

https://reminder.top/297099969/

 

注目してしまったのは引用されているインタビューの中で「新しい方面はフミヤ氏やトオルくんに任せて」って仰っているところ。チェッカーズのアレンジであったり新しい音楽の取り入れとか方向性に関しての舵取りは明らかにこのふたりが中心だったことがよく現れていて、自分は自分でスタンダードをやるだけって感じがまさにマサハルさんらしいなあと。

あとこの人は郁弥さんをずっとやっしゃんとかフミヤ氏とか藤井兄とか呼んでいらっしゃって、絶対フミヤ~~って呼ばない感じが、本当にマサハルだよなって思います。(伝わらない日本語ですみません。)同じバンドのメンバーなんだけど先輩後輩感が拭えてないというか、そういうとこ本当にこの人らしいよね。良い。

シンガーとして

ソロ聞いてないからチェッカーズ関連ばっかになってしまうの申し訳ないですが中々面白いなーと思ったのは彼のソロライブで歌われたCherie。 真っ直ぐな歌い方ですよね。平坦でもある。藤井フミヤがかなり柔和でなめらかに歌えるタイプなのと対照的ですがとてもうまいと思います。〈もう言わないよ〉の刹那的な歌い方なんてアコギ1本のアレンジだから本当に生きてる。

このCherieに関して言えることは、やっぱり藤井郁弥の世界だなあっていう笑。歌詞が藤井郁弥によるものだから仕方ないのだけど〈この恋が決められた運命ならせめて時を越えて通り過ぎたい〉とかがまさはるさんからナチュラルに出るとは私は思えなくて、そこの違和感にのってるマサハルの真っ直ぐすぎるボーカルが味わい深くて結構好きです。

ただ、やっぱり藤井郁弥だなーって思ってしまうし、自然と比較しちゃうので…マサハルが歌ってるレア感は魅力的だけどチェッカーズありきになっちゃうというか。だからシンガーとしての鶴久政治を本当に味わいたいならマサリナとかソロとかチェッカーズを離れた音楽を聞かなきゃいけないのかもしれないなあって思いました。


鶴久政治 1990 Timely Tour 5/5 『Cherie』

 

 

個人的にはFinalの愛と夢のFASCIST→It's alright→See you yesterdayって流れがチェッカーズのボーカル3人の個性と実力と魅力を最も味わえる傑作かつ集大成だと思ってます。みんな全然違うタイプボーカルなのにひとつのバンドだったってすごいこと。あとSee you yesterdayの藤井郁弥のラスボス感は最高どころじゃなく覇者レベル…CDにしてくれて本当にありがとうとしか言えないです…みんな聞いて!

 

今どきこんな話題について書いてる私相当あれだけどそれぐらいチェッカーズは面白いバンドだってことで。しかもお二人がリードボーカルとった曲について何も触れないというグダグダっぷりに我ながら悲しくなってしまいましたがそれはアルバム毎の感想にぶち込む予定です…いつ書けるかなぁ笑

 

ていうかこの2人にこれだけ書いてたら他のメンバーに対する文量えぐそうだなーってって思いました!